By Emily Parker
Updated on August 29, 2019, 10:20 AM

「暗号資産リブラは、最も民主的に統制されたステーブルコイン」 マネックスCEO 松本 大 独占インタビュー

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日本はまだ、暗号資産界において最重要なプレーヤーの一角だといえる。コインヒルズ(Coinhills)のデータによれば、暗号資産ビットコイン(BTC)取引のトップは米ドルだが、日本円は何とそれに次いで2位。この数字は世界のビットコイン―法定通貨取引の20%以上を占める。日本の投資家が、これほどの取引額を叩き出しているというのだ。


この事実を究明するため、LongHashはマネックスグループ取締役会長兼代表執行役社長CEOの松本 大(まつもと おおき)氏に話を伺った。マネックスは東京に本社を構える金融サービス大手で、日本最大級の暗号資産取引所、コインチェックを買収したことでも知られる。


松本氏(以下、敬称略):「日本市場は個人色が強いが、米国市場は機関投資家向け。暗号資産でもそれは同じだ。日本の機関投資家はリスク回避型の傾向があり、個人投資家だと逆にカウボーイ的な猛者が多い。」


2018年初旬に発生したコインチェックのハッキング事件で、日本では暗号資産に対する規制がさらに強化された。取引所が新規の通貨を上場する際のハードルがかなり上がってしまったのもこのためだ。しかし、松本氏は「今すぐではないかもしれないが、状況は好転するだろう」と語る。


松本:「日本において、暗号資産に対する警戒心は次第に緩和されてきている。10月にはFATF(金融活動作業部会)が来日して調査を行う予定で、金融庁もそれまでは規制強化は割けるはずだ。彼らも調査前は気が気でないだろうから。来年の規制には暗号資産デリバティブやセキュリティトークン・オファリング(STO)も絡んでくると思うし、2020年は色々期待できそうだ。取引活動だけでなく、新しい製品やサービスにも期待したい。


長期的なトレンドは上向きだ。暗号資産の個人取引は日本では今のところ波が穏やかだが、暗号資産にかかる日本の法的フレームワークは、まだ世界で見ても最も進んでいると思う。割合早い段階で、暗号資産の個人取引は再開するとみている。


最終的には、日本がアメリカよりも“クリプト・フレンドリー(暗号資産に理解が深い)”になるだろう。日本の個人投資家たちも、これまでよりリスクを取る構えになってきている。」


ただ大きな問題は、日本の暗号資産界にはほぼ個人投資家しかいないことだ。


松本:「機関投資家が暗号資産に投資するケースは見られない。日本では常に個人ファーストで、機関は遅れを取っている。個人市場としてはアメリカを抜くほど進んでいるが、日本では個別株、FXの取引や外国投資信託の購入がメイン。資本市場のプレーヤーとしての幅も深みも足りない。アメリカのような小規模ヘッジファンドやファミリーオフィスが存在していないことからも明らかだ。


日本では全く競合がいないため、暗号資産の機関投資市場には大きなチャンスがある。」


この「競合の不在」について、松本氏は次のように説明している。


松本:「日本の機関投資ファンドマネージャーは雇われ、つまりサラリーマンでインセンティブはあまり芳しくない。ミスをしてもペイされないのは痛い。


新領域に算入できるだけの担保もないため、失敗したときのリスクは大きい。ミスすれば機関投資家は資産のオーナーから責められるし、極めてリスク回避をしたがる傾向にある。昔からずっとこの調子だ。」


松本氏はこれについて、ある「狂気的なアイデア」も語っている。株式だけでなく、コモディティや暗号資産も含めたグローバルインデックスをつくることだ。


松本:「インデックスは証券や債権になりがちだが、パッシブ運用の暗号資産を組み入れたインデックスがあればどうだろう?機関を呼び込みたいなら、効率と効果の両面でインデクセーション(指数化)が効く。こちらが、彼らの代わりに意思決定をしてあげることが重要だ。」


また松本氏によれば、グローバルな暗号資産市場は日本の機関投資家にとってメリットだという。


松本:「暗号資産市場に日本の機関投資家がより多く参入すれば、流動性がさらに安定し、結果としてボラティリティも軽減されて相場決定のプロセスも容易になる。機関投資家が入ることでコイン貸付市場の流動性が増し、ボラティリティは収まるだろう。」


米国の機関投資家は暗号資産界でも存在感を見せているが、まだまだ十分とは言えない。

松本氏の考えでは「ボラティリティを収めるために、市場にはもっともっと多様化したプレーヤーが必要。米国機関投資家は証券取引委員会(SEC)に左右されすぎている」そうだ。


松本氏自身は現在この問題の解決に取り組んでおり、機関投資家やカストディ業界と議論の場を設けて「日本での機関投資活動を盛り上げるための最善策を模索」しているそうだ。


リブラは通貨の「ドル化」の新形態


Facebookが新しく発表した独自のステーブルコイン、リブラ(Libra)。批判する声も多いが、マネックスグループはリブラ・アソシエーション(Libra association)に加盟を申請するなど意欲的だ。


松本:「“虎穴に入らずんば虎子を得ず”で、リブラのメンバーになることを決意した。加盟が認められるかは先方次第だ。」


松本氏はリブラについて強気の姿勢を崩さない。「リブラは最も民主的に統制されたステーブルコインのひとつになると思う」からだ。「リブラ・アソシエーションにはマスターカード、ビザなどの大企業を含む100社が加盟している。運営体制としては申し分ない。世界中から良質な大企業が集まり、共に協力しながら民主的にアソシエーションを運営していくのだから。」


これは、巷の暗号資産よりもはるかに民主的な運営体制なのは間違いないだろう。


松本:「たとえば、イランは金に裏付けられた独自の暗号資産を計画中だが、このイラン・コインがリブラを上回ることは絶対にない。」


また、松本氏はリブラがバイナンス(Binance)の「ヴィーナス(Venus)」よりも優勢だと強気の表情を見せる。ヴィーナスは取引所大手のバイナンスが発表した新しいオープンブロックチェーンプロジェクトで、新たなステーブルコインの確立を目指すものだ。氏自身は、バイナンス1社が手掛けるヴィーナスよりも、世界有数の100社が共同サポートするリブラの方が優勢だと見ている。リブラ否定派もいることは勿論承知の上だ。


松本:「小国にとってはリブラは脅威かもしれない。今後、自国の通貨価値が急速に下がり、リブラに取って代わられる可能性があるからだ。」


しかし、このような国々では自国の通貨よりもドル所有が好まれる傾向が続いている。


松本氏の言葉を借りれば、「リブラは通貨のドル化の新形態」だと言えるだろう。



(英語版:https://www.longhash.com/news/japans-retail-crypto-investors-are-cowboys-an-exclusive-interview-with-monex-ceo-oki-matsumoto



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