By Nick Chong
Updated on July 01, 2019, 15:34 PM

ビットコインをしのぎ年初来500%近く高騰 バイナンスコイン躍進の背景は


大手仮想通貨取引所バイナンスが発行するトークンのバイナンスコイン(BNB)が大幅に高騰している。今年に入ってから約6カ月の間に6ドル前後から32.50ドルへと458%も値を上げた。同期間にビットコインが記録した値上がりは130%だ。BNBがなぜ他の仮想通貨をしのぐ高騰を続けているのか、バイナンスはいかにしてBNBの価値提案を強力なものにしてきたのかを検証してみよう。


バイナンスコインのこれまで


2017年にローンチされた多くの仮想通貨プロジェクトと同様、ジャオ・チャンポン氏率いるバイナンスもトークンの公開セールを実施した。大きな野心を掲げ熱意に駆られたチームに恵まれたジャオ氏(暗号通貨コミュニティーでは「CZ」の呼び名で知られる)は同年7月、1500万ドルの資金調達に成功した。2017年だけでもこうしたトークンセールで調達された資金の総額は数十億ドル規模にのぼるため、この結果も驚きではない。このイニシャル・コイン・オファリング(ICO)の段階でのBNBの価値は0.1ドルだった。


バイナンスは、独自のトークンを持つ数少ない暗号通貨取引所のひとつとなった。当時のBNBの価値提案は、初年度の取引手数料がすべて50%割引になるというものだった。暗号通貨市場は取引手数料率が高い(中には1回の取引あたり最大0.25%のところもある)ため、大勢の人がBNBを買いあさった。「クジラ」と呼ばれる大口保有者たちにとって、安い手数料は迅速に何百、何千、さらには何万ドルという利益をあげられることを意味する。


バイナンスの経営陣は、競合を震えあがらせるようなプラットフォームを築くと約束。投機家たちに手数料の割引を提示し、次のコインベースになるのではとの期待を抱かせた。ホワイトペーパーの中で、バイナンスのマッチングエンジンは1秒に100万超の取引を扱うことも可能であること、いずれは先物取引、信用取引や分散型取引などを扱う可能性があることを示唆した。当時、こうした約束は達成可能ではあるがかなり革命的な目標と見られていた。


BNBの価格はその後何カ月も2ドルを下回る状態が続き、立ち上がりは低調だった。一部の投機筋が引き起こした2017年12月と2018年1月の急騰は別として、この低調は2018年まで続いた。同年12月13日までには価格が4.5ドル未満に下落し、BNBは停滞状態に陥ったように見えた。


だがBNBの物語はここで終わらなかった。何しろビットワイズ(Bitwise)の分析サイト「BitcoinTradeVolume.com」によれば、バイナンスは取引所の中でビットコインの取引量が最も多いのだ。


ラージキャップの中で最高の業績


BNBは過去6カ月で予想を上回る業績を達成した。ビットコインの価格が依然、過去最高の2万ドルを55%下回る水準にとどまり、複数のアルトコインが損失を出し続けているにもかかわらず、BNBの現在の価格は過去最高値を大きく上回っている。これほどの業績を達成した「ラージキャップ(時価総額5億ドル以上)」はBNBだけだ。


以下に示すとおり、BNBはビットコインさえをも大きく引き離し、他のアルトコインを優に超える高騰ぶりを見せている。1月1日以降、BNB/BTCの通貨ペアが148%高騰している事実も、BNBの優れたパフォーマンスを際立たせている。


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(図:2019.6)


暗号通貨セクターが成長段階にあるとはいえ、かなりの弱気相場の中でこのような驚くべき業績を達成した例は、ほとんど聞いたことがない。過去の歴史的な市場回復(たとえば2015年)の多くはビットコインがけん引してきた。だが今回はバイナンスコインが、ライトコインのような他の「勝ち組」と共に早い段階から市場を導いている。


この偉大な業績を促したものは一体何だったのだろうか?


魅力は割引だけじゃない


平たく言えば、BNBは過去数カ月で単に手数料が格安な通貨よりもずっと価値あるものに成熟し、その結果として需要が高まったのだ。米大手ヘッジファンドを退職後に仮想通貨ヘッジファンド「イキガイ・アセット・マネジメント(Ikigai Asset Management)」の最高投資責任者(CIO)に転身したトラヴィス・クリンは最近、仮想通貨ポッドキャスターのピーター・マコーマックの番組で次のように語った。


「ジャオ・チャンポン氏には敬意を表する。彼はBNBを保有することに価値があることを示す、説得力のある主張を試み続けている。たとえばアルゼンチンにはフィアット(法定通貨)のオンランプがあるがBNBが必要となるし、BNBがあれば取引手数料の割引の恩恵も受けられる。投資家にとっては文字どおり簡単に儲かるローンチパッドのIEO(新規仮想通貨公開)もあるが、それに参加するにもBNBが必要だ。彼は近々、証拠金取引の実装も予定している。(BNBに価値をもたらす)ちょっとした仕掛けがたくさんある」


かつては月に数百ドルを節約するための方法だったものが、今では増え続けるバイナンスの商品やサービスへのアクセス獲得方法となっている。そうした商品やサービスは、BNBに「勢いを維持するための方法」をもたらすために設計されたものばかりだ。その一部を詳しく見てみよう。


実際に使える資産


他の多くのアルトコインと異なり、バイナンスはBNBに決済手段としての有用性をもたらすことに成功している。バイナンスが作成し5月にCZが発表した以下の図に示されているように、BNBはHTCのスマートフォン「EXODUS」の料金支払いや、クリプトコム(Crypto.com)およびプンディX(PundiX)のデビットカード口座入金、仮想通貨の決済代行企業コインペイメンツ(CoinPayments)、コイニファイ(Coinify)やコインゲート(CoinGate)を使っているオンラインショップを通じて購入した品物の支払いに使うことができる。BNBはまた、ちょっとしたユーティリティートークンとして「エンターテインメント」や「ファイナンス」にも応用して使用が可能だ。このことは2019年に入ってからのBNBが目覚ましい業績をあげている主な原動力ではない可能性が高いが、打撃にもなっていないことは確かだ。


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(図:2019.6)


バイナンスチェーン


今年4月、バイナンスは独自のDPoS形式のブロックチェーン「バイナンスチェーン」を公開した。ネイティブアセットはBNBだ(これまではイーサリアムベースだった)。仮想マシンやスマートコントラクトがないにもかかわらず、迅速なブロック生成と低い手数料が売りのバイナンスチェーンはこれまでのところ(毎秒の取引件数を見ると)かなりの成功をおさめている。ミスリル(Mithril)、ギフト(Gifto)、ファントム(Fantom)やレッドパルス(Red Pulse)など数多くのプロジェクトが、イーサリアムベースのERC-20トークンをバイナンスチェーンのBEP2フォーマットに統合させている。さらにバイナンスは、バイナンスチェーン上での取引によって生じた手数料の一部を回収すべく、同チェーン上でのBNBのステーキングも可能にする意向だ。


バイナンスDEX


独自のブロックチェーンをローンチした際、バイナンスは分散型取引所「DEX」も開始した。ユーザーが第三者の仲介なしに(バイナンスチェーンのノードは別だが)仮想通貨の取引を行うチャンスを提供するものだ。自社のBEP2トークンをDEXに上場したい企業は、バイナンスに(噂によれば)10万ドル超相当のBNBで手数料を支払う必要があるとされている。またDEX上での取引は主にBNBを基準通貨として行われるため、取引を行いたい者はBNBを購入する必要がある。こうした理由からBNBの需要が高まり、またBNBに投機以外の実際の有用性がもたらされている。


イニシャル・エクスチェンジ・オファリング(IEO)


バイナンスコインの年初来の業績を後押ししている最大の要素がIEOかもしれない。IEOはブロックチェーン・プロジェクトのトークンを販売・告知するICO(イニシャル・コイン・オファリング)の実質的な新形態だ。IEOは事実上、2019年のICOだとする声もある。


一部の取引所ではビットコイン、イーサリアムや他の一般的な仮想通貨しか受け付けないが、バイナンスは取引によってBNBやその他の仮想通貨も受け付ける。そのためIEOの参加者は、IEOを通じて販売されるトークンを購入するためにBNBを購入しようと考えるだろう。


それだけではない。バイナンスのIEOに投機家たちが殺到したことを受けて、バイナンスは抽選システムを導入した。これによってユーザーは、BNBを20日以上保有することで、最大5枚の抽選参加券を獲得するチャンスが得られる。BNBを100~200枚保管していれば抽選券は1枚、100~300枚なら抽選券は2枚、といった具合に、保管しているBNBの枚数によって貰える抽選参加券の数が変わる。6月1日時点で500BNBの価格は1万5000ドルを上回るため、バイナンスの次回IEOに向けてBNBの価格がさらに高騰していっても不思議ではない。


IEOは投資家たちにとって数百パーセントの利益が得られるため、多くの投資家がこれらの販売に参加しないのは馬鹿らしいと考える。仮想通貨評価サイトのICODropsが指摘するように、バイナンスの一部のIEOのROI(投資利益率)は10倍以上にのぼる。「上手くいかなかった」IEOでも、ROIは4~5倍となっている。


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(図:2019.6)


このように着実に利益が得られることからBNBの需要は大幅に高まっている。CZは最近、バイナンスとして月に一度こうした販売を行う意向だと発言しており、今後もIEOをめぐる熱狂から利益を得る方法として、BNBに継続的な需要が創出されるものと予想される。


証拠金取引(マージントレーディング)の手数料


バイナンスは近々、身元を明らかにしているユーザーを対象に証拠金取引を提供する見通しだ。現在はベータ版として一部の顧客のみに提供されているため、その詳細はほとんど知られていないが、レバレッジをかけるには手数料がかかる可能性がある。これはBNBの保管やステーキングによって軽減される可能性が高いため、BNBの需要が近い将来、高まることも予想される。


またバイナンスは最近、BNB関連以外の発表も行っている。これには仮想通貨の店頭(OTC)取引開始や、ビットコイン、イーサリアムとライトコインをクレジットカードで購入できるサービス、シンガポールでのフィアット(法定通貨)オンランプのローンチ、オーストラリアでのバイナンス・ライト(現金でビットコインを購入できるサービス)のローンチなどが含まれている。もっと最近では、大型アップデートの「Binance 2.0」も発表された。


バイナンスの金銭的な成功に対する賭け


BNBは、仮想通貨のエコシステムの中で最も有名な企業のひとつであるバイナンスの業績に対する期待値のあらわれでもある。190を超える国・14カ国語での対応の取引サポートがあり、登録ユーザーは1000万人以上。競合分析ツールのシミラーウェブ(SimilarWeb)によれば、毎月のホームページ訪問数は3500万を超えている。実際、コインベース(Coinbase)とビットメックス(BitMEX)を除けば、最もよく知られている仮想通貨関連企業である可能性が高い。


バイナンスの財務状況も、とりわけ設立から24カ月も経っていないことを考えると傑出している。米暗号通貨メディアのザ・ブロック(The Block)が4月に報じたところによれば、バイナンスの2019年Q1(第1四半期)の利益は7800万ドル相当と、2018年Q4の4700万ドルから大幅に増加した。2017年Q4の2億ドルからは減少しているものの、素晴らしい業績であることに変わりはない。


まだ若い企業にもかかわらず、2018年の利益は暗号通貨業界のベテラン勢を大幅に上回った。バイナンスの2018年の利益は4億4600万ドルと、CZが同年半ばに予想した10億ドルを50%強下回った。それでもロイターの推定によれば、コインベースは収益(利益ではない)5億2000万ドルで、バイナンスがコインベースに大きな差をつけて勝利した可能性がきわめて高い。バイナンスの利益が2018年Q4から2019年Q1にかけて66%増加したことを考えると、通年の業績は昨年を上回る可能性がある。


BNBへの投資は本質的に、バイナンスの将来の成功や、同社がトークン保持者のために価値を生み出す能力への賭けを意味する。だから今はユーザーがバイナンスの輝かしい成功を見て、BNBに幾らかの資本を投じることでその勢いに便乗しようと考えている可能性が高い(BNBが有価証券だと言っている訳ではない)。


バイナンスは毎四半期、純利益の20%をBNBのバーン(廃棄)に費やしている(各取引所が独自のデジタル通貨のバーンを実施するのは一般的な傾向だ)。だがそのためのトークンの買い戻しは、単純な需要と供給の経済学にとって利益となる。ザ・ブロックによれば、バイナンスはこれまでに1160万BNB――総供給量の5%超――のバーンを実施しており、これが「同社の短い歴史の中の7四半期」で7億3300万ドルをもたらしている。だがこれをめぐっては議論もある。ザ・ブロックの4月の報道によれば、バイナンスはホワイトペーパーを修正し、BNBの市場からの買い戻しは行わずにトークンのバーンのみを行っていることを明かした。CZはこの更新について、次のように説明している。


「バーンをどのように実施しているのかをより深く理解してもらうために、最近ホワイトペーパーを更新した。たとえば「買い戻し」という文言を削除した。というのも我々は実際にはBNBの買い戻しは行っておらず、単にBNBのバーンを実施することで供給を減らしているからだ。また「利益」という文言も削除した。有価証券と紐づけられてしまう可能性があり、それは避けたい事態だからだ」


いずれにせよ、バイナンスの成功はBNB保持者にとっての成功となるはずだ。


バイナンスの今後:仮想通貨業界を独占?


多くの観点から、バイナンスの未来はこれまで以上に明るいように思える。同社はホワイトペーパーで概要を示した数々の目標の達成に向かって着実に前進しており、継続的に高い取引高、ユーザーベースの増加や着実なウェブトラフィックを実現している。さらに、同社の商品は競合他社の商品よりも優れているという声もある。トレーダーのダン・クラークは6月1日にツイッターで、バイナンスのDEXは5時間の取引高が「2番目に規模の大きなDEX(IDEX)の前日の取引高」よりも多かったと指摘した。市場の独占、または少なくとも暗号通貨に関するあらゆるもの(ベンチャーキャピタル/プロジェクト起業支援からICO指導、スポット取引からビットコインのデリバティブ/金融商品、資産管理(ウォレット)や業界調査など)に足掛かりを築くことを目指しているように見えるバイナンスにとって、これはいい兆候だ。


今後に向けては、幾つかの懸念もある。バイナンスは過去に規制当局とさまざまな争いを繰り広げている。目立ったハッキング被害は2度(いずれもビットコイン4000万ドル相当が盗まれた)あり、2度目の被害はわずか数週間前のことだ。バイナンスは設立以降ずっと規制のグレーゾーンにいて、ユーザーの多くには、彼らが特定の機能を活用したい場合を除いて、身元確認(KYC)やマネーロンダリング防止(AML)を順守せずに提供するサービスを利用させている。


規制当局が近いうちに取り締まりを実行する可能性を懸念すべき理由はある。実際、世界各地の政府機関や多国籍機関は仮想通貨についてこれまで以上に監視を強化している。2018年の仮想通貨バブル崩壊を受けて、仮想通貨が休止資産ではないことを認識しているからだ。


そして5月下旬、バイナンスは「分散型」取引の利用について、アメリカを含む29カ国からのユーザーをブロックすると発表した。もちろん、代理または仮想のプライベートネットワークを使えば容易にブロックを迂回できるが、良い兆候ではない。奇妙なのは同社の主力サービスであるBinance.comがブロックされていないことで、このことは水面下で規制にまつわる混乱がある可能性を示唆している。


それでも衝撃緩和策は幾つかある。バイナンスは現在、ヨーロッパの島国マルタ(同国の指導部や台帳技術やデジタル通貨を強く支持している)と協力して、なんらかの形で規制の確実性を確保するべく取り組みを行っている。実際、地元の複数の暗号通貨企業は地元政府と強力な関係を築いており、このことからマルタは「ブロックチェーン・アイランド」とも呼ばれている。


もしも規制にまつわる難題を克服することができれば、バイナンスは優位な立場に立つことができるはずだ。


(英語版:https://www.longhash.com/news/why-binance-coin-is-up-nearly-500-ytd-beating-bitcoin)




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