By Nick Chong
Updated on October 03, 2019, 12:10 PM

期待外れか…ビットコインは中国人投資家の逃避先にならない?


2019年第2四半期以降、米国と中国は度重なる関税と政治的脅威を特徴とする新たな貿易戦争に突入している。

 

この貿易戦争において、暗号資産ビットコイン(BTC)は今日のようにマクロ経済が不透明な状況下で、アナリストらに「ヘッジ」や「逃避先」として注目されている。しかし、この中国の貿易戦争に関し、BTCが一部のアナリストが思い描くような完璧なヘッジになり得ていないことを裏付ける証拠が多数出てきている。

 

この記事では人々が貿易戦争と絡めてBTCをどのように見ているのかをより詳しく調査し、そうした見方が的を射ているのか、数字を深堀していくことで考察したい。

 


米中貿易戦争の渦中にビットコインあらわる

 

直近数ヶ月の暗号資産関連のツイッターを追っている人であれば、あるトレンドが見られることにおそらく気がついたかと思う。BTCがウォールストリートとメインストリート双方の投資家やアナリストから、継続中の貿易戦争からの潜在的な逃避先として見られているのだ。

 

断続的な障害に悩まされるここ最近の米中間政治・貿易関係は香港のデモによってさらに悪化し、従来のマーケットも実質的にパニック状態に陥っている。シカゴ・オプション取引所(CBOE)が主要株価指数S&P500を対象に設定するボラティリティ指数、VIXは(最悪の状況となった日の前日である)5月4日の12.87からこの記事執筆時点の17.09まで推移し、そのピークは8月初旬の24.59だった。

 

同時に、世界的に頼れる安全資産と目される貴金属や日本円、スイスフランの価格に大きな上昇がみられた。ちなみに、金の価格は1,500ドルにまで達しており、これは年初から240ドルのアップとなっている。

 

BTCも貿易戦争の激化の影響を受けたようで、同様に2019年に劇的な回復を遂げた。

ブルームバーグのティム・カルパン氏が8月初旬に伝えたところによれば、BTCと金の相関は5月以降0.496から0.827まで上昇し、強い正の相関を示している。ファイナンシャル・タイムズ紙による以下のチャートを見ると、BTCが金の価格推移を追随しているように見えることがわかる。完全なる相関ではないものの、金融業界に驚きを与えるには十分ではないだろうか。

 


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またブルームバーグはBTCと中国人民元との30日の逆相関が9月初旬に過去最低を記録し、未知の領域に突入したと伝えている

 

不気味なタイミングで現れたこれらの相関関係が、特に中国人投資家の間でみられる「BTCを資金の逃避先とする」前述の社会的トレンドに繋がっている。

 

実際、クアント・フィクション(Quant Fiction / GMのエンジニアで趣味でデータサイエンティストの顔も持つブライアン・ブランディン氏のツイッターネーム)による分析では、機関投資家によるBTC関連のツイート数が増えているという。平均で55,217のフォロワーを持つ171名の個人をサンプルとして分析したところ、「ポートフォリオ、ファンド、資産、ウェルスマネジャー」関連のツイッターユーザーらが「ビットコイン(Bitcoin)」と「リスクオフ/避難先(risk off / safe haven)」といった言葉を年初の倍の頻度でつぶやいていることがわかったそうだ。

 

この貿易戦争からの避難先としてBTCがバズっているのは明らかだ。

 

 

逃避先としてはまだ未成熟—その効果には疑問も

 

しかし、データを見ると、この「安全な逃避先」のハナシにはいくつもの穴があるようだ。

 

貿易戦争に陥っている両国がお互いに強烈なパンチを打ち合っていた8月初旬、奇妙なマーケットトレンドが浮上した。中華人民共和国の投資家の御用達として広く知られるフォビ(Huobi)の店頭取引トレーディングデスクのデータによれば、テザー(USDT)が1.3%近くのディスカウントで取引されていた。中国の暗号資産ベンチャーキャピタリストであるドーヴィー・ワン氏によれば、BTCも同じタイミングで割安で取引されていた。

 

確かに1.3%のディスカウント(当時のBTC価格11,800ドルに対し、150ドル相当)は全体で見れば大した金額ではない。しかし、何度も言及しているように「安全な避難先」という文脈を考えれば、大きなプレミアムが期待されるマーケットではディスカウントを適用した取引自体が衝撃を与えるものといえよう。The Blockの研究責任者であるラリー・サーマック氏が8月12日付けの記事で指摘したように、「BTCを購入しているのは(貿易戦争がエスカレートした結果)先週実施された人民元切り下げの影響を受けた中国人投資家ではない(ことが裏付けられている)」というのだから。

 

話はまだ続く。BTC推進派のエコノミストで世界的マクロ経済アナリストのアレックス・クルーガー氏が最近取り上げたデータは、数十億ドル規模の関税発効であれ、「何々の責任は中国にある」と非難するトランプ米大統領の直近の演説であれ、貿易戦争のニュースが中国の消費者には実質的に影響を与えていないことを示している。

  

9月20日につぶやかれた長大なツイッターのスレッドでは、「中国のグーグル」と称される検索エンジン、百度(バイドゥ)上で中国語の「BTC」「貿易戦争」「トランプ」の検索数が同時にスパイクしたのはたった一度だけだと前述のアナリストは述べている。これが起こったのは中国政府が米国に対し「人民戦争」を宣言した5月14日のことだ。以下のチャートを見れば、2019年4月から同年6月の間にほぼ同期するように検索数の急騰が見られるのがわかるだろう。


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価格についていえば、BTCがリアルタイムで貿易戦争の見出しに「反応」したのも一度だけだ。クルーガー氏は別のスレッドで、この出来事はトランプ大統領が中国による「知財の窃盗」疑惑と同国に課すとした数千億ドルの関税について複数パートからなるスレッドを発表した際に発生したと伝えた。このツイート直後の数分間、BTCは実際0.5%程度反発した。しかし実際起きたことといえばそのくらいだ。大規模な貿易戦争の激化の中で「ゴールド2.0」になると期待された資産がもたらした利益はわずか1%にも満たなかった。

 

5,500億ドル相当の中国製品に5%の追加関税を課すとしたスレッド(もちろん、不審な行動を複数回取ったとされる中国人俳優についてトランプ大統領が仄めかしたことについては言うまでもないが)がBTCマーケットに大きな影響を及ぼさなかったとすれば、BTCは成熟した避難先と呼ぶにふさわしいのではないか。いや、実はそうではない。なぜなら、トランプ大統領の同スレッドにより金の価格は2%上昇したからだ。7兆ドルのアセットクラスにとっては2%の上昇はとんでもない金額だ。

 

BTCが0.5%反発したのはマクロ経済の影響を受けたためと思うかもしれないが、その仮説は見当違いかもしれない。

 

金の支持者でリバタリアン寄りの投資家として著名なピーター・シフ氏は、貿易関税ニュースの際のBTC価格の動きは、アセットが実質的なリスクオフトレードであったというよりは、人々が避難先としてBTCについて思案したことの結果なのではないかと指摘した。シフ氏の仮定によれば、これは「ビットコイン価格は米中騒動のニュースと並行して起こったビットコインラリーのすぐ後に急落したため、逃避先としてのメリットをもたない」という事実にも裏付けられているという。

 


暗号資産は人民元やその他すべてのものと無関係

 

BTCが資金の真の避難先として機能しないという以上に、暗号資産はそもそもニュース自体に反応しない。投資家らはBTCの動きは理屈ではないという事実を受け入れつつある。

 

読者の方々も覚えているかもしれないが、4月初旬にBTCは1,000ドルも急上昇し、その後現在まで強気相場が続いている。「機関投資家が群がった」と一瞬思うかもしれないが、一日で20%もの急騰を引き起こした明確な触媒は見当たらなかった。また、その他のBTC価格上昇・下落の劇的なシーンをみても、そうした価格動向の根本的な引き金といえるものはほとんどなかったのだ。

 

暗号資産業界のエクゼクティブですら、「なぜBTCの価格が変動するのか」という質問には答えに窮する。少なくとも「純粋な原理に従って日々、値が動いている」とは言わないだろう。5月中旬、ShapeShiftのCEOで長年に渡ってBTCを支持してきたエリック・ボーヒーズ氏がブルームバーグTVで、「BTCの反発は単純に暗号資産の循環の副産物で、『個人の集合』が(個人が殺到する形で)短時間で立て続けにBTCの買いを決めたため」と主張した。

 

確かに、地政学的な混乱や景気低迷への恐怖に囚われている時期にBTCが従来型のアセットクラスを凌ぐパフォーマンスを見せたことで、BTCは従来の市場の低迷時にも影響を受けずにいられる無相関の資産であると期待するかもしれない。しかし、資金の有望な避難先と呼ぶのはいささか早とちりではと言わざるを得ない…少なくとも現時点では。



(英語版:https://www.longhash.com/news/bitcoin-isnt-the-safe-haven-for-chinese-investors-we-thought-it-was


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