By LongHash
Updated on July 11, 2019, 9:15 AM

批判される暗号資産リブラ、フェイスブック側の解釈とは | LongHash 独占インタビュー

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フェイスブックが独自の暗号資産リブラ(Libra)について発表してから、同社には批判の声が多く寄せられている。


暗号資産の思想的リーダーたちの中では、リブラがビットコインの原則、つまり暗号資産は非中央集権であれという原則を破るのではないかという危惧も一部渦巻いている。「ビットコインとブロックチェーン(原題:Mastering Bitcoin)」の著者であるアンドレアス・アントノプロス氏はツイッターで以下のようにコメントした。


「5つの基本的な質問を聞いてみよう。リブラは誰にでもオープン?中立的?ボーダレス?分散的?検閲に対処できる?答えはノー、ノー、ノー、ノー、ノーだ!」


2008年の金融危機からほどなくして誕生したビットコインは企業や政府の権力を阻止することを期待されている。ビットコインのブロックチェーンは簡単に検閲されたり、強力な一大組織にコントロールされたりすることがないよう設計されている。しかし、リブラの構造はこれとはまったく異なる。リブラは許可型のブロックチェーンであり、世界でも有数の企業各社がノードを所有する。さらに事態を悪くしているのが、こうした企業の一部が少なくもアメリカでは信用されていないということだ。


また、プライバシーを主張するある人物による皮肉のツイートも瞬く間に拡散した。

「ウーバー(Uber)みたいな道徳観、ペイパル(PayPal)みたいな検閲への耐性、それにビザ(Visa)みたいな中央集権、これら全てがフェイスブックの実績あるプライバシーの下ひとつになった暗号資産なんて待ちきれない」


さらに大きな問題をはらんでいるのが、そもそもアメリカ人の多くが既にフェイスブックへの信用自体を失ってしまっていることだ。フェイスブックはここ数年で多くのスキャンダルに見舞われており、この中には2016年の大統領選挙へのロシア介入疑惑もある。

 

フェイスブックは膨大な量のユーザーデータを保持しているが、そのデータの保護に関してはあまり良い実績がない。昨年には、トランプ大統領の支持勢力が雇った政治工作機関が何万人ものフェイスブックユーザーの個人情報を入手していたことがわかった。強大な力をもつあまり、フェイスブックは分割されるべきだと考える人も出てきた。

 

ブロックチェーンはフェイスブックのような中央集権型の企業を阻止するのに一役買うはずだったが、リブラによってブロックチェーン技術はフェイスブックをより強大な存在にしてしまうかもしれない。


ロングハッシュは、リブラのローンチによって巻き起こった論争について、フェイスブック ブロックチェーン部門のクリスティーナ・スメッドリー氏にインタビューを行った。スメッドリー氏はリブラのデジタル・ウォレット導入を行うフェイスブックの子会社、カリブラ社(Calibra)のブランディング担当者だ。なお、以下の質疑応答は内容をより明確にするために一部編集されていることをお断りしておく。


 

ロングハッシュ(以下、LH):リブラに関する批判の大きなものとして、リブラが分散化されていないということ、そしてそれによってフェイスブックがより強大な力を得るのではないかということがあるが。


フェイスブック(以下、FB):フェイスブックはリブラ・アソシエーション(Libra association)を構成する28団体の1メンバーに過ぎない。リブラ・アソシエーションはブロックチェーンを開発し、管理するために創設されたものだ。


リブラが分散化するかどうかについて。仮に今現在、存在していないグローバル通貨を新たに作りたいと考えたとする。この通貨が乱高下しないよう安定させるために、裏付けとしてのリザーブを用意し通貨バスケットに紐づける。これらはすべて、多くの暗号資産がこれまでしてきたことだ。パーミッションレスのロックチェーンへと移行する前に、まずは今述べたようなことを滞りなく進める必要がある。


 今後リブラ・アソシエーションが責任を持って、5年以内にはネットワークをパーミッションレスに移行する予定だ。フェイスブックはこのアソシエーションの一員に過ぎず、私たちが持つ責任、権力、そして裁量権は加盟している全28団体と何ら変わらない。


LH:巷で議論されている様々な内容をざっと質問していくが、2つ目は、「リブラは真のブロックチェーンではない」というもの。

 

FB:その意見には賛同できない。現時点ではそうではないが、将来的にパーミッションレスに移行する。私たちはムーヴ(Move)と呼ばれるプログラム言語を開発し、ホットスタッフ(HotStuff)プロトコルをベースに構築している。現存する他のブロックチェーンについても精査したが、私たちが解決したいことのひとつである「世界規模でファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を実現する」ためにはネットワークのスピードが重要だった。それで様々なブロックチェーンについてつぶさに調査した。


ビットコイン、そしてイーサリアムについて調べた。そして、最善策は独自のブロックチェーンを構築することだと判断した。フェイスブックの開発者は皆、リブラはブロックチェーンだと主張するだろう。

 

多くの人が混同してしまうのが、まずリブラがオープンソースであるということ。パブリックチェーンで誰もがトランザクションを確認できるという事実は見落とさないでいただきたい。しかし、現在フェイスブックが開発しているウォレット(私のようなパスワードを忘れてしまう人間にとっては最適なサービスだが)必ずしもこれを使う必要はない。オープンソースブロックチェーンではどんなものでも独自に開発できるからだ。

 

LH:プライバシーについてはどうか?カリブラはユーザーについてどの程度の情報を収集するつもりなのか、そして、個人情報の提供について心配が尽きない人々にとってそれはどういった意味を持つのか。人々は混乱しているように思う。

 

FB:カリブラはプライベートなネットワーク上で管理されるウォレットだ。ユーザーについてのソーシャルデータと金融データは分けて管理するようベストは尽くしている。また、フェイスブックのウェブサイトでも公開しているが、ガイドラインも策定した。ガイドラインにはプライバシーに係る原則やガイドレールについて記載している。現段階では商品が構築される前なので、これらも最終版ではない。そのため、ガイドラインに書かれたすべてを達成するとここで約束することは控えるべきだと思うが、私たちが何を目指しているかは明確になっていると思う。


すべてのブロックチェーンと同様に、ユーザーのトランザクションには透明性が担保されている。しかし、中には個々人が自らのアイデンティティを隠せるようブロックチェーン上に新たなものを構築する人が出てくるかもしれない。根源的にこうしたことが起こり得るだろうと考えている。


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LH:リブラはKYC(本人確認)やAML(マネーロンダリング対策)無しで購入することも可能か?


FB:私が言及できるのはカリブラのウォレットについてのみだが、このウォレットは使用される国の規制やコンプライアンスを遵守する。よって、そもそも暗号資産取引が認可されていない国やフェイスブックが事業を展開していない国においては、カリブラとしてサービスを提供することはない。ユーザーはどの国にいようとも、国のガイドラインに従ってKYCのプロセスを踏む必要がある。

 

LH:ということは、現時点でフェイスブックが進出していない中国ではカリブラも展開予定はない?


FB:ブロックチェーン自体は存在できるし、リブラやそのネットワークは中国にも進出できるだろう。


LH:もし政府からカリブラへユーザーの個人情報について提出要請があった場合、そうした事態への対応プロセスは整備されているか。


FB:そうした場合の対応は、他の金融サービス提供者がマネーロンダリングや犯罪目的に対する規制に準ずるのと全く変わらない。従うべき様々な項目がある。私たちも金融サービスを提供することになるので、そうした部分での対応は他のサービス提供者と一切変わらない。


LH:リブラのミッションの大きな部分を占めるのが、金融機関へのアクセスを持たない層の人々に力を提供することだ。しかし、KYCやAMLのプロセスを踏まなければならないことを考えると、葛藤があるのでは?


FB:この点については社内でも相当議論した。初期段階では金融サービスを享受できていない貧困の中の貧困といった層に手を差し伸べることはできないだろう。それは、各国のガイドラインに従う必要があるからだ。私たちはこういう企業なので、その部分についてはきっちりやらなければならない。人々がオープンソースのネットワーク上で、個人のアイデンティティに関する新たな捉え方を模索し始めるのではないかと思っている。


とても面白いのが、例えばワッツアップ(WhatsApp、インスタントメッセンジャーアプリ)を使っている人の中にも銀行口座を持っていない人がいる。こうした人たちの役に立てると思っている。そして、この人たちが金融ネットワークにスピーディにアクセスできるよう、どのようにKYCを実行できるか考えていくつもりだ。

 

LH:少なくとも米国ではフェイスブックへの信用問題がありそうだ。フェイスブックは多くのスキャンダルに見舞われてきた。そして人々はリブラをフェイスブックと関連づけて捉えるだろう。

 

FB:技術の面で私たちが相当の役割を果たしてきたことについて、私たちは誠実に、オープンに語ってきた。そしてその技術のすべてをオープンソースにし、リブラ・アソシエーションに委ねた。今後、さらに多くの企業について、彼らがどういったことを行っていて、ネットワークのために何を計画しているかが明らかになれば、こうした問題は私たちだけが抱える問題ではないのだと人々も気がつくのではないか。


他方で、海外の国々ではフェイスブックが今も信頼を得ていることを忘れてはならない。フィリピンのような国では多いに評価されている。カリブラのウォレットは人々にとって今まで手にしたことのないソリューションであり、その意味で歓迎されるだろうと信じている。

フェイスブックはすべてに真剣に取り組んでいる。ユーザーがサービスを使用するにあたって私たちに寄せる信頼がいかに価値あるものか、その信頼に対しどれだけ私たちが敬意を払っているかを示すために、できることは全てやっている。

 

LH:過去に学んだ教訓で実際にカリブラに活かされていることはあるか。

 

FB:私たちはできて間もないチームなので、過去の教訓とは必ずしも言えないが、カリブラについてはこれまでとは違うやり方をしてはいる。例えば、リリース予定の商品について、これまではこんなに早い段階で情報を公開することはなかった。しかし今回は公開した。それは、人々が「フェイスブックにとってカリブラにどんな旨味があるのか?」と疑問に思うことが分かっていたからだ。


それで、私たちは、ウォレットを開発し、そのウォレットはこんな見た目で、ということを明確に伝えている。商品の見た目についてまで公開するというのは、私たちにとっては異例のことだ。

 

これは長い旅の道のりだ。私はフェイスブックで働けることを誇りに思っている。フェイスブックのサービスを使ってくださるユーザーのために正しいことをしようと奮闘している人間はたくさんいる。


LH:カリブラが主要な銀行を揺るがすことになると思うか?


FB:まだ先は長い。グローバルな通貨が一日あるいは一晩でどうにかなるとは誰も思わないだろう。私たちは心を開いて人々と話をし、学びたいと思っている。リブラネットワークのテストネットをこれほど早い時期にローンチしたのも、開発者やコミュニティがそこをベースに新たな開発を行い、テストし、その結果を確認できるようにと考えてのことだ。そしてそれもこの長い旅路のたった一部に過ぎない。

 

LH:ではどういったことに懸念があるか。

 

FB:私がこのチームに入ったのはリブラのミッションを信じているからであり、フェイスブックのリブラチームに参加して、その1日目からこのリブラネットワークの構築に携わっているのは、今がその時だと心から信じているからだ。1枚の写真を無料で、しかも10秒足らずで送ることのできる世の中だ。マネーだってそうなるべきだろう。マネーは進化できずにいる唯一のものだと思う。

私にとって一番の懸念は、リブラが公平にチャンスを与えられず、真にこのサービスを必要としている人のもとに届くことなく捨て去られてしまうことだ。そのことを考えると眠れなくなる。

 

LH:しかし、先ほど仰ったように米国以外の国では状況は違うように思われる。

 

FB:確かにそうだが、このサービスは海外へ送金しようとする人に使って欲しいと思っている。こうした送金を行う人の多くは米国を拠点としており、自国へ送金する際に大金を支払っている。カリブラはこういった人たちへのソリューションになる。もちろん彼ら自身がこのサービスを利用したいと思うことが前提だが。

 

LH:予期できない問題も出てきそうだ。

 

FB:問題もそうだが、問題以外にも予期できないものがある。このサービスが提供し得るものの偉大さだ。オープンソースネットワークで何が起こるかを予見できることはきっとこの先もないだろう。

 

LH:その部分が批判されていることのひとつに繋がるのだが、一部の人々はこれほどまでに大きなことを成そうとしているフェイスブック、そして同社CEOのマーク・ザッカーバーグが傲慢だと批判している。

 

FB:まず始めに断っておきたいのが、彼は傲慢ではないということ。次に、私たちが傲慢でないと行動を通して伝えられていたら…と思っている。コミュニティを取り込んでいるというのは事実だし、私たちは耳を傾けている。レディット(Reddit、米国のソーシャルニュースサイト)のようなものや、コミュニティが私たちをどう思っているかに対して、懸命に耳を傾けている。そして、そうすることで得るものがたくさんある。既にブロックチェーン上に新たな構築を始めた人たちがいて、これには本当にワクワクしている。


LH:では(ローンチを発表する前に)なぜこのプロジェクトは秘密裏に動いていたのか。


FB:誤って解釈される、理解するのが難しいだろうという懸念があったからだ。実際に発表への準備段階で多くの人が誤解していた…私たちは説明を始めるまでにきちんと準備しておきたかった。


LH:何が最も誤解されていたと?

 

FB:リブラが中央集権型のフェイスブックコインになると誤解されていたようだが、実際はそうではないことだ。


(英語版:https://www.longhash.com/news/facebook-libra-interview-my-biggest-worry-is-that-it-doesnt-get-a-fair-chance


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