By Justin Cai
Updated on November 22, 2019, 9:51 AM

徹底検証:2017年ビットコインバブルの犯人はテザーの価格操作か?


最近発表された学術論文が「2017年のビットコインバブルの原因は、テザー(Tether)による価格操作である」と主張し、多くの人が眉をひそめる結果となった。

 

この論文は、もともとは2018年に発表されたもので、最近になって新たな分析が付け加えられた。本論文の共著者の1人である、テキサス大学オースティン校のジョン・グリフィン教授は、自身の個人ウェブサイトで、まもなく本論文の改訂版が、査読付きの権威ある学術誌『The Journal of Finance』に掲載されると告知した。

 

テザーは論文での主張に対し、真っ向から否定している。論文は「砂上の楼閣」にすぎないと一蹴し、「暗号通貨市場に対する根本的な理解が欠如しているのは明らか」と述べているが、論文中に対し漠然と「方法論の欠陥」や「データセットの不備」を指摘するのみで、具体的な誤謬については言及できていない。

 

ニューヨークに拠点を置く法律事務所 Roche Freedmanは、今年10月、テザーとその関連会社のBitfinexに対して、市場操作とマネーロンダリングについての集団訴訟を起こした。この訴訟によれば、「裏付け」のない大量のテザーが秘密裏に発行され、市場価格を不正に操作していたのだという。

 

テザーはもちろん、これらの主張も否定している。

 

テザーの問題点

 

テザーは、暗号通貨市場で最も人気の高いステーブルコインである。そのため、今後も様々な議論を誘発する可能性がある。

 

テザー社はこれまで、同社が発行するすべての暗号通貨は、準備金によって100%「裏付け」られていると主張してきた。しかし、今年のある時点から、『準備金』の定義を、「伝統的な現金等価物」から「伝統的な現金等価物、および、第三者への貸付債権を含む、その他の資産」へと拡大している。

 

また、同社が主張する透明性のレベルは、「職業的専門家による監査」から「監査なし」に後退してしまった。今年9月にBitfinexの株主であるDong Zhao氏が述べたところによると、テザーは少なくとも83.75%以上の準備金を米ドルで持っているはずだという(※Bitfinexへの融資分を控除後)。

 

このような「公式な契約条件」の無断変更にも関わらず、市場は、依然としてテザーにかなりの信頼を寄せているといえる。そのことは、今なお、テザーが米ドルに対してほぼ等価で交換されていることからも明らかだ。時価総額でもトップクラスを維持している。

 

Bitfinexがテザーの顧客の資金を流用したという、ニューヨーク州検事局が起こした訴訟でさえ、テザー価格の下落は、一時的なものにとどまった。

 

価格操作はあったか?:論文の検証

 

今回の論争における真実は何か?

 

まずは、論争の火付け役となった学術論文を概観してみよう。テザー社が「砂上の楼閣」と一笑に付した研究だ。

 

論文の結論は、学術論文としては異例の断定表現となっている。論文では「ビットコイン価格の変動パターンは、通常の投資家からの資金流入という需要面よりも、裏付けを持たないデジタルマネーによる価格の吊り上げという、供給面の仮説によって説明がつく」と結んでいる。

 

近々発表される、この論文の改訂版においても、これらの「強い言葉」を維持されているかはわからない。しかし、現時点で提供されたエビデンスを詳細に検討した結果、これらの「強い言葉」を信じるに足る心証は得られなかった。

 

第一に、テザーが準備金に裏付けられていないことのエビデンスとして、資金循環のスキームに関する「間接的な仮説」しか提示できていない。この仮説は、テザーの監査と関係がある。テザーは月次の監査を受けているため、大量のテザーが発行された場合には、月末に保有するビットコインの一部を売却する必要があり、その結果、ビットコイン価格は毎月末に下落するという仮説だ。著者らは、サンプル期間の24ヵ月においては、この仮説が統計的に有意であると主張している。

 

しかし、この「月末効果」が生じる理由として、当然考慮すべき他の可能性については触れていない。さらに、著者らは、2017年12月と2018年1月の2つのサンプルを「外れ値」として除外すると、月末効果は統計的に有意ではなくなることをしぶしぶ認めている。

 

言い換えれば、著者らの結論は、24という小さなサンプルサイズにおける2つの「外れ値」がなかったとすれば、すべてが瓦解してしまうはかないものなのだ。これでは説得力があるとは到底いえない。

 

第二に、著者らは、Bitfinex上のクジラたち(1LSgと呼ばれる大口投資家たち)が、ビットコインの撤退ラインである500ドル以下の取引を好むことを見い出した。統計モデルを用いて、これらのクジラたちの取引が3時間以内にビットコイン価格に大きな影響を与え、その影響は新しいテザーの認可後に、より大きくなることを発見した。

 

著者らは、この発見を価格操作の証拠として担ぎ上げた。しかし、クジラたちはトレード時のスリッページにより、ビットコイン価格を動かしてしまうことは広く知られている。本論文では、その「常識」を無視してしまっている。

 

全体的に見て、この論文は、テザーによる市場操作を証明するには、非常に心もとない。

 

価格操作はあったか?:LongHashの所見

 

LongHashは、この問題について、より多角的な評価を行うため、独自の調査を行った。

 

テザーのビットコイン市場への影響を測定するため、テザーの時価総額をビットコインの時価総額で割った『テザー購買力』(Tether Purchasing Power)という指標を設定した。これは、現在市場に流通しているテザーのスポット価格で、何枚のビットコインが買えるかを示す指標である。この比率が高ければ高いほど、テザーによる不正な価格操作の蓋然性は高くなる。

 

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上のグラフを見ると、2017年のバブル相場の際、『テザー購買力』は夏までは上昇し、その後、年末まで徐々に低下していったことがわかる。そして、弱気相場の中で再び大きく上昇し、2018年末にピークに達している。

 

このことは、たとえテザーが実際に市場操作を行っていたとしても、その影響力はビットコイン価格の下落時に最も強いことを意味している。これは、テザーの発行が2017年のバブル相場を牽引したという主張と矛盾する。テザーの供給は、バブル相場のピーク時にはまだ少なかったのだ。

 

その後、テザー以外のステーブルコイン(その多くはテザーとは異なる発行メカニズムと透明性を持っている) が多く市場に参入していることを考えれば、ビットコイン価格がテザーによって操作されているとする主張はさらに疑わしい。

 

以下に、「ステーブルコイン業界」における、テザーの市場シェアをプロットする。2018年に新しいステーブルコインが次々と出現し、テザーから急激に市場シェアを奪ったことがわかる。しかし、この傾向は2019年の初めから、反転の兆しを見せている。

 

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結論

 

私たちは、テザーがビットコイン価格を操作しているという主張には、客観的な証拠が欠けていると判断している。

 

さらに、私たちは独自の調査により、テザーのビットコイン価格に対する影響力は、強気市場ではなく弱気市場で最大になることを発見した。今後、より多くのステーブルコインが市場に出回れば、テザーをめぐる論争も徐々にフェードアウトするのではないだろうか。


(英語版:https://www.longhash.com/en/news/3208/Data-Analysis:-Tether-Manipulation-Did-Not-Cause-Bitcoin's-2017-Bull-Run?from=groupmessage&isappinstalled=0


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