By José Rafael Peña Gholam
Updated on March 08, 2019, 11:59 AM

ベネズエラ=ビットコイン天国説にもの申す


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世界中のメディアがベネズエラの政治危機を伝えている。野党指導者フアン・グアイドは、マドゥロ政権の法的な正当性を否定し、両陣営の争いが続いている。

 

ベネズエラの経済的、政治的、社会的危機に関する報道だけを見ていると、この国にも人々の暮らしや活動があることを忘れてしまいがちだ。これだけの混乱にもかかわらず、大半の国民は政治紛争とは無縁だ。ただ暮らしの糧を稼ぐことに必死になっている。

 

ベネズエラ人は働き者で、日銭を稼ぐためにあちこちの都市を渡り歩く人もいる。一方で、国の危機がもたらしたチャンスをものにして事業に成功した人もいる。

 

政府が国民の生活向上のための明確な手を打っていないと言うつもりはないが、大規模な人の移動が始まっていることを否定するつもりもない。私の知人の多くも他の国に移住した。生まれてこの方、これほど多くの人々が路上生活を送ったり食べ物を求めてゴミ箱をあさっているのを見たこともない。医療サービスはなかなか受けられないうえ高額で、公衆衛生状況は日に日に悪くなっている。だが残念ながら、ビットコインはこうした問題を解決する手立てにはなりそうにない。

 

たしかにベネズエラ人の中には、仮想通貨を積極的に使って現在の危機を切り抜けようとしている人たちがいる。そしてベネズエラではビットコインが力を得ているとの記事が多く書かれた。私自身、一部のベネズエラ人にとってビットコインが命綱になっているという記事を書いたことがある。

 

だがベネズエラにおけるビットコイン人気をことさら大げさに言うのはやめようではないか。またこの国の危機を、仮想通貨業界の関係者が宣伝材料に使うのもやめてもらいたい。例えばベネズエラには仮想通貨のダッシュで買い物できる商店が推計2500を超えると言ってみたり、デジタルウォレットサービスのエアTmなどが仮想通貨でベネズエラに寄付を行うキャンペーンを始めたりといったものだ。

 

例えばビットコインのエアドロップなどを利用してベネズエラに住む人々に仮想通貨で金を送ろうと考える人もいる。こうした寄付プロジェクトは一見、害がないように聞こえるかも知れないし、善意から始まったものもあるだろう。問題は、仮想通貨を受け取ることのできるベネズエラ人は一般的に、最も困窮して救いの手を求めている人々とは違うということだ。大部分のベネズエラ人は仮想通貨のことなど聞いたことがないのだから。

 

■ベネズエラにおける仮想通貨のエコシステムはいかに変わったか

 

ベネズエラの危機は深刻の度を増している。政治危機が新たな段階にさしかかる一方で、経済危機もさらに悪化し続けている。法定通貨はゼロ5つ分切り下げられ、「ボリバル・ソブラノ(VES)」に改称された。それでもこの記事を書いている時点で、1杯のコーヒーの価格(0.5米ドル相当)は1800VESを上回っている。

 

デノミネーションが繰り返される一方でヤミの為替レートに関する法律が撤廃されたことで、国民は以前よりもおおっぴらに法定通貨を外貨に、特に米ドルに両替している。それでも政府が合法的に取引される外国為替を規制しているせいで、いまだにドルを手に入れるのは困難だ。おかげでビットコインなどの仮想通貨を使ってみようという人も増え、ローカルビットコインズ・ドットコムという相対取引のプラットフォームが人気を集めている。ローカルビットコインズにおける取引高でベネズエラはロシアに次ぐ2位で、トラフィックでは最多だ

 

国際社会からの経済制裁もあって、ベネズエラ政府は仮想通貨ブームに乗ろうとしている。政府は先ごろ、新しい両替および送金の制度を導入。仮想通貨は高い料金を課され、不利なレートでの取引を強いられることになった。

 

政府はまた、自前の仮想通貨「ペトロ」の普及を図っており、年金受給者にペトロでの受取を強いたりしている。政府は複数の仮想通貨取引所の立ち上げを認可したが、公的な規制はまだできていない。

 

数年前と違って仮想通貨はもはや「地下の」ものではなくなったが、幅広い普及や受容にはまだ壁がある。仮想通貨を一種の詐欺のように考えている人は多いし、使おうにもインターネットを使える環境にない人も多い。ベネズエラのネット環境は悪化し続けている。政府が通信の許認可権を握っているためだ。大都市から離れれば離れるほどネットの接続状態は悪くなる。スマホはそもそも安い物ではないが、ドル建てで売られることが多いためにベネズエラ人にとってはなおさら高価なものとなっている。

 

政府が旗振り役をしているのだから、ベネズエラ人は比較的、仮想通貨のことを分かっていると思うかも知れない。だがたとえそうであれ、仮想通貨の知識もそれに対する信頼もほとんどない。私の家族でさえ、自分のビットコイン(少額だが)を管理するのを嫌がっており、私が代わりにやっている始末だ。たしかに仮想通貨での支払いを受け付けると言っている小売店はたくさんあるが、経営者がその場にいなければ仮想通貨を扱いたがらないのが実情だ。

 

ベネズエラにおける仮想通貨のマイニングもメディアの関心を集めてきたが、マイニングに対する規制が厳しいことには留意すべきだ。もし民間企業がマイニング機材を輸入しようとすれば、元が取れないほどの高い関税を払わされる。合法的にマイニングがやりたければ(つまり政府の保護を受けるということだ)、複雑怪奇な官僚機構と渡り合わなければならない。マイニング機材をおおっぴらに販売している会社もあるが、明らかに政府と直接のつながりがあるところばかりだ。それでも、警察はチャンスがあらばマイニング機材の押収を行うことがある。被害者は報復を恐れ、泣き寝入りを強いられることも多い。

 

一般的に、ビットコインの最も便利な使い道の1つは、カネを国外に持ち出すことだ。特に中小企業にとってはそうだ。仮想通貨を外国との送金や受取に利用する人もいれば、貨幣の機能の1つ、価値の保存という点で法定通貨よりは信頼性が高く、ドルよりも手に入れやすいからと使う人もいる。また、フリーランスの人々への支払い手段としても使われている。IT機器を販売する一部の企業は、銀行を通さずに済むという理由からビットコインを支払い手段の1つとして使っている。

 

とは言うものの、こうした使用例はビットコインなど仮想通貨をあえて使ってみようとする人々に限定された話だ。それ以外のベネズエラ人たちはビットコインを理解していないか関心がなく、国外に資金を移動させるためにドルを何とか手に入れようと努めたり、国際的な銀行に口座を持つ友人を探そうとしたりしている。

 

ビットコインはベネズエラの一部の人々にとっては重要な役割を果たすことができるだろう。だが仮想通貨の普及は限定的で、今後はもっと有機的な形で広がっていくべきだ。外国の仮想通貨界隈の人々は単に、ベネズエラのことが分かっていない。自分たちに都合のいい仮想通貨の物語にベネズエラの危機を無理に当てはめようとしてはならない。

 

筆者はベネズエラの仮想通貨メディア「クリプトノティシアス」の編集長


(英語版:https://www.longhash.com/news/264

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