By Kyle Torpey
Updated on November 27, 2019, 10:00 AM

ビットコイン決済普及のカギは…立ちはだかる「税金」の壁


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現在、ビットコインをはじめとする暗号通貨を、日常の支払いに使っている人はほとんどいない。その理由のひとつに、ビットコインは価格変動が大きく、日常の支払いには使いにくいという側面がある。しかし、より深刻なのは、支払いにビットコインを使うと税金の問題が生じてしまうことである。ビットコインはすでに長期的な価値の貯蔵手段としての地位を確立しているが、支払手段としてはいまだ広く利用されている訳ではない。そう、税金の存在があるからだ。


ビットコインの熱烈な支持者の中には、暗号通貨での支払い時にかかるキャピタルゲイン税を逃れようと脱税をたくらむ者もいる。しかし、一般消費者はそのようなリスクを取ろうとはしない。今年の夏に開催された『ビットコインカンファレンス2019』では、ビットコイン決済の際に生じるキャピタルゲイン税の問題について、BitrefillのCEO、Sergej Kotliar氏と、ShapeShift CEOのErik Voorhees氏が議論をたたかわせた


税法のルールを守る意志さえあればいい、というものでない。ビットコインでの支払いにあたって、ルール通りにきちんと税金を払いたいと思っている人たちでさえ、会計処理が法律に違反していないか確認するだけで複雑な会計ルールに直面し、頭を痛めることになってしまう。


ビットコイン払いは課税取引


世界の多くの国では、商品やサービスの支払いにビットコインを使用すると課税対象になる。たとえば、あなたがビットコインを購入し、ビットコイン価格が上昇したとしよう。そのビットコインを使って新しいテレビを購入すれば、ビットコインの値上がり分だけ税金を払わなければならない。ビットコインを買い物に使えば、それは実質的にビットコインを販売したとみなされるのである。


「日本でもアメリカでも、適正に税金を申告するためには、暗号通貨での支払いをすべて記録しておく必要がある」と、CryptactのCEO Amin Azmodeh氏はLongHashに語った。


Koinly CEOのRobin Singh氏はLongHashに対し、「ビットコイン払いから生じる税金の問題は、世界中のほとんどの行政区域で生じている」と語った。Coin Centralによると、ベラルーシ、ポルトガル、シンガポールでは、ビットコイン払いに対してキャピタルゲイン税がかからないがそれは例外的なのだという。


ステーブルコインもまた、キャピタルゲイン税はそれほど問題とならないレアケースといえる。ステーブルコインは法定通貨の価値と連動するからだ。


「ステーブルコインを手に入れるためには手数料がかかるにも関わらず、法定通貨に対する価値ははとんど変化しない。そのため、買い物にステーブルコインを使うと常に『手数料負け』して損をしてしまうというということに気付いた」とSingh氏。


もちろん、ステーブルコインのユーザーが税金関連の問題を完全にまぬがれているわけではない。当該ステーブルコインが連動している法定通貨が、課税国の現地通貨に対して増価した場合には課税対象となってしまう。これは、FacebookのLibraプロジェクトにおいても生じる問題だ。


これら税金に関しては、現時点では必ずしも大きな問題とはされていない。しかしながら、暗号通貨が支払いのためにより頻繁に使用されるようになれば、ユーザビリティの深刻な妨げとなる可能性がある。だが今のところ、暗号通貨の大部分は投機目的で売買されているにすぎない。


「ビットコイン投資家たちが、値上り益によって利益を得ることを夢見るだけでなく、商品の支払いにビットコインを利用したいと考えるようになれば、もはや純然たる投資ではなくなる」とSingh氏は付け加えた。


自動化プログラムで解決可能か?


だが、この税務上のわずらわしさを解決してくれる、自動化されたソリューションが生まれるかもしれない。暗号通貨利用者の適正な税務申告を支援しているSingh氏によれば、暗号通貨による支払いの追跡は、従来の金融システム上の取引よりも容易なのだという。


「クレジットカードや現金とは異なり、暗号通貨の追跡は非常に簡単といえる。ウォレットのアドレスさえ分かれば、取引履歴はすべて共通のフォーマットに記録されているからだ」とSingh氏。


「銀行から四半期ごとにPDFレポートをダウンロードして、税務ソフトウェアに手動で入力する手間と比べてみて欲しい。課税問題をクリアすることさえできれば、これまで取引所が行ってきたいかなる誇大広告よりも、はるかに強い市場牽引力となるはずだ。その実現を、私はさほど難しいこととは思わない」


Azmoudeh氏もまた、暗号通貨決済により生じる税金の問題を、ソフトウェアによる自動化で解決できると考えている。ただし、流動的な規制への対応には問題が残る。


「当社のプラットフォームサービスは、すべての取引につき、ソース(取引所、ウォレット、P2P)からの情報を元に、リアルタイムないし定期的にレコードを生成し、支払時または換算時には、適正な会計基準に基づいて記帳できる。まさにオールインワンの総勘定元帳だ」とAzmoudeh氏は説明する。「会計基準に関する問題としては、特定の取引(エアドロップでもらった暗号通貨をウォレットの中に入れたり、所有していたコインがフォークした場合等)の会計処理について、行政区域によってもルールが必ずしも明確でないことが挙げられる」


KoinlyとCryptactが提供するサービスは、大多数の暗号通貨ユーザーが使用しているソフトウェアには組み込まれていない。取引所によっては、各ユーザーの取引履歴に基づいて自動的に税金レポートを送信してくれるサービスもあるが、まだまだ不完全だ。ユーザーごとにキャピタルゲイン税の総額を表示してくれても、ユーザーが複数の取引所を使用している場合には抜け漏れが生じるからだ。


現時点では、ほとんどのユーザーが、自動レポート機能を持たず管理者もいないウォレットに資金を移動していることも問題をさらに複雑にしている。また、そもそも、暗号通貨を使って買い物をすることが税金の問題につながることを知らないユーザーも多いだろう。


待たれる法的整備


ビットコインウォレット用のより優れたソフトウェアの開発に加えて、税法の変更や課税対象の明確化等、法的整備も待たれる。米国ではCoin Centerが、キャピタルゲイン税に関して、ビットコインなどの暗号通貨を従来の外国通貨と同様に扱う法案の推進に尽力している。考え方として、誰かがビットコインを使って総額600ドル以下の商品やサービスを購入した場合は非課税とする、というものだ。だが残念ながら、この提案はまだ十分な支持を得ていない。


サイファーパンクや一部の熱烈なビットコイン信奉者たちは、税務署のことなど気にせずビットコインを使っているかもしれない。が、一般的な消費者は違う。暗号通貨でコーヒーを買いたいと思っても、そのたびに「ひょっとして脱税になるのでは?」という不安がよぎるだろう。逆にいえば、ビットコインが支払手段の主流になるのであれば、税法の変更は不可欠だということだ。


今年、アメリカ国税庁(IRS)やカナダ国税庁(CRA)をはじめとする世界中の徴税機関の担当者がとった行動は、これまで暗号通貨を使って買い物をする際にキャピタルゲイン税を払わなかった人たちにとって将来的に「青天の霹靂」となることだろう。



(英語版https://www.longhash.com/en/news/3210/One-Reason-People-Aren%E2%80%99t-Paying-With-Bitcoin:-Taxes


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