By José Rafael Peña Gholam
Updated on October 30, 2019, 11:00 AM

ビットコインで子供の出産費用をカバー ベネズエラ人の父が語る


9月30日、長男のエイドリアンが、ベネズエラの首都カラカスで生まれた。ハイパーインフレの進むこの国で、私は他の国民とは違って出産費用の全額をその日のうちに支払うことができた。それは、ひとつに私が勤勉で貯えがあったことにもよるが、貯えをビットコインで持っていたことも大きい。おかげで息子は、経済危機のさなかにも関わらず、首都にあるこぎれいな私立クリニックで生まれることができた。


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今のベネズエラに住むには、一人一人が経済的な自衛手段を身につけなければならない。その1つの選択肢がビットコインだ。以前書いたように、私は2年前からすべての給料をビットコインで受け取ってきた。もちろん、ビットコインの価格はとても不安定なのだが、それでもハイパーインフレにさらされているベネズエラ・ボリバル(VES)よりははるかに安心感がある。ブルームバーグのインデックスによると、ベネズエラでの「カフェ・コン・レチェ」(ミルク入りコーヒー)の価格は、2019年1月には 450VESだったのが、9月には 14,000VESになった。


私は自分が父親になることを知った瞬間から、妻と生まれてくる子どものために「きちんとした治療」を受けさせるにはいくらかかるか?を考え始めた。ほんの数年前までは、私立クリニックでの出産費用は500米ドルから700米ドルの間だった。しかし、今回私たちが利用した私立クリニックでは最低でも1,500米ドルかかり、帝王切開の場合は2,500米ドルとのことだった。


それでもこの費用は、私立クリニックとしては最も安い部類に入る。カラカスの私立クリニックで、帝王切開で6,000米ドルかかったという話を聞いたことがある。現在、ベネズエラの最低賃金は30万VES、つまり月に16米ドルにすぎないにも関わらずだ。


あなたは不思議に思ったかもしれない。ベネズエラに住んでいる私が、なぜ米ドルの話ばかりしているのか?と。この国では、ほとんどの企業がハイパーインフレから自社の資産を防衛するため、商品やサービスの対価を「ドル建て」で受取っているのだ。企業は保有する米ドルで直接支払うこともできるし、仮に「ボリバル払い」しなければならないときは、必要な分だけその日のVES/USDレートでボリバルに替えて支払うこともできる。私も自分の稼ぎをビットコインでなく、米ドルで貯えることもできたのだが、ビットコインの方を選択した。おかげで、自分の資産を防衛するだけでなく、ビットコイン価格の上昇による含み益まで手にすることができた。


もし、私が自分の貯えをすべてVESで持っていたらどうだろうか。おそろしいことに、ハイパーインフレのため、今回の出産費用が私の貯金額を上回っていた可能性が高い。


もし私がビットコインを持っていなかったら、妻と子どもはどうなっていたのだろう? その場合の最善の選択肢は、産婦人科専門の公立病院に入院することだったはずだ。しかし、公立病院は患者であふれていて、個々の患者に注意が払われることはほとんどない。予算も不足している。これらの公立病院の職員の中には、最低賃金で働いている者もいる。そのため、公立病院には高いスキルを持ったスタッフはほとんどおらず、妊婦に対するケア不足や、妊婦虐待にすらつながる可能性がある。


当然、悪いうわさも多い。陣痛に入った妊婦が何日も放っておかれたとか、赤ちゃんが一人ぼっちで放置されたとか、疲れ果てた女性が赤ちゃんをベッドから落としてしまった、とか。


私は、妻にこんな扱いを受けさせるわけにはいかなかった。


多額の支払いのため、一度にビットコインを売ることにはリスクが伴う。私の息子が生まれたまさにその週に、ビットコインの価格は10,000米ドルから8,200米ドルに急落してしまった。


その間、私は気が気でなかった。ビットコイン価格が下落を続けるのを見て、自分の資産を守るため、ステーブルコインに替えるべきかとも思った。できれば、ビットコイン価格が回復してくれることを期待していた。無情にも、出産費用の支払期限 9月30日は、刻々と迫って来たのだが‥‥。


結局、私は「待つ」ことにした。しかし、ビットコインの価格は結局10,000米ドルには戻らなかった。私は、1BTC=8,200米ドルのレートでクリニックの請求書を支払わざるをえなかった。


私は、自分のビットコインを、LocalBitcoinでボリバルと交換した。このサイトは、買い手と売り手をマッチングさせる人気のウェブサイトである。息子が生まれる前日の夜、私はビットコイン取引のエスクローサービスを提供しているこのサイトにビットコインを転送した。そして、自分と同じ銀行を使っていて、プラットフォーム上で高評価を得ているユーザーと取引することにした。このユーザーのIPアドレスはシンガポールだったが、電話番号はベネズエラのものを登録していた。


ビットコインはドルよりも入手しやすい。少なくとも私にとってはそうだ。LocalBitcoinで最も好条件のオファーを見つけ、取引を行い、あとは送金確認を待つだけ。私はオフィスから一歩も出る事なくビットコインを受け取ることができた。


一方、ドルを手に入れるのは少々やっかいだ。WhatsappやInstagramで、友人たちや親戚に自分が米ドルが欲しいことを知らせなければならない。もし誰か米ドルを譲ってくれる人が見つかれば、レートを交渉して、VESを送金している間に現金を手渡す場所を決めなければならない。


今回の息子の出産では、妻が出産した日の朝にビットコインをボリバルに交換した。これは非常にリスキーな行為だった。私自身、あらゆる種類のトラブルについて熟知していたので(もしトラブルが起こればクリニックに時間通りに支払うことができなくなる)、すべてのプロセスの最中にはとても緊張した。


取引相手のユーザーの反応が鈍い、レスポンスが途絶える、銀行が高額な金額を不審だとして送金を差し止める、等々。私の取引相手は、同じ銀行の4つの口座から異なる金額で計6回の送金を行った。これはおそらく、1回の送金だと目立つし、リスク分散の意味もあったのだろう。


ボリバルを受け取ると、私はすぐにクリニックで支払いをした。2回に分けて振り込んだが、とくにトラブルは起きなかった。最後の送金が終わったときの安堵感は、息子に初めて会った瞬間吹き飛んでしまった。クリニックへの支払いで私の2年分の稼ぎは吹き飛んでしまったが、息子の


誕生のためにベストを尽くし、その手段としてビットコインを選んだことを私は誇りに思っている。

正直、自分のビットコインの大部分を手放すことにはためらいがあった。しかし、息子に安全な出産を、母親にまともな治療を受けさせることは、手元のビットコインよりもはるかに価値のあることだった。


私は以前、「ビットコインではベネズエラを救えない」という記事を書いた。今でもそう思っている。しかし、今回の一件で、私の人生においてビットコインがいかに重要であったかを再認識する結果となった。ベネズエラのハイパーインフレと闘い、貯金をし、数時間のうちに大金を支払ったのだ。金(ゴールド)を使って取引していたとしたら、どんな苦労があったことか。


SNS上で「ビットコインは投機目的以外に使い道がない」と言っている人をよく見かける。深刻な経済問題がない国では、たしかにそうだろう。しかし、ベネズエラのように経済システムが機能不全に陥っている国では、ビットコインのポテンシャルが最大限に活かされている。私の息子の誕生はまさにその証しだ。


(英語版:https://www.longhash.com/news/in-venezuela-i-used-bitcoin-to-pay-for-the-birth-of-my-son

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