By Nick Chong
Updated on June 11, 2019, 16:37 PM

テザーの資金流用疑惑で仮想通貨ETFに暗雲


投資家は数年前から、米ドル建てのビットコインETF(上場投資信託)の登場を心待ちにしている。しかし、米証券取引委員会(SEC)の認可がたびたび先送りされ、実現が危ぶまれ始めたなか、さらに冷水を浴びせる出来事があった。アイフィネックス(iFinex)──大手通貨取引所ビットフィネックス(Bitfinex)と、仮想通貨テザー(USDT)を発行するテザー社(Tether)の親会社──の資産状況に重大な疑惑が発覚したのだ。

 


ETFは、株価指数などの指標に連動して運用される投資信託で、普通の株式のように売買できる。金融当局の厳しい規制を受けるため、ビットコインETFの上場が承認されれば、リスクを嫌う投資家もビットコイン市場に参入しやすくなる。したがって、ビットコインETFが仮想通貨市場の起爆剤になると期待する声もある。

 

アイフィネックスについて4月25日にニューヨーク州のレティシア·ジェームズ司法長官は、投資家に対して「詐欺に当たる可能性のある、現在も継続中の行為」に関与している疑いがあると発表した。

 

州司法省によると、ビットフィネックスは、パナマを拠点とする決済サービス企業クリプト·キャピタルに預けた資金を引き出せなくなり、8億5000億ドルの損失が生じている。クリプト·キャピタルが管理する資産は、ポーランド、ポルトガル、アメリカの政府機関に差し押さえられていると見られる。

 

ビットフィネックスは大混乱に陥った。顧客からの資金引き出しの依頼に応じ、事業の経費をまかなうために、資金を確保しなければならなかった。ビットフィネックスの経営陣は、関連会社のテザー社の資金で融資限度枠を確保するという方法を取った。

 

ビットフィネックスは現在、7億ドルの融資限度枠を保持しているが、これはテザーの裏付け資産を流用して担保されたもので、ステーブルコインであるテザーの準備金が不足している可能性があると、州司法省は指摘している。

州司法省は4月25日の声明で次のように述べている。

「ビットフィネックスは既に、テザーの準備金から少なくとも7億ドルを使っている。こうしたやり取りは、投資家に開示しないまま、テザーの現金の準備金をビットフィネックスの裏金として扱うものであり、ビットフィネックスが開示していない巨額の損失と、顧客の資金引き出しに対応できない状況を隠すために行われている」

 

ビットフィネックスのジャンカルロ·デバシニCFOは疑惑が発覚した直後に、同社の大株主である中国人投資家ジャオ·ドンに対し、凍結されている資産が解除されるまで「2、3週間」かかると伝えている。しかし、当局の捜査が(アイフィネックスの対応もしくは州司法省の方針により)長引けば、仮想通貨市場に長期的な損害をもたらしかねない。

 

この1年、米証券取引委員会(SEC)はビットコインETFの認可申請を繰り返し拒否しており、価格操作への懸念や、投資家の保護や市場の監視体制が不十分であることを指摘している。そのこととアイフィネックスの問題は、無関係に思えるかもしれないが、決してそうではない。

 

SECの使命は、「投資家を保護し、市場の公正性、秩序、効率性を確保して、資本の情報開示を促進すること」だ。つまり、「市場に関する情報の適切な開示」を促し、不正行為を最小限に抑え、関連する企業や投資家への支援を通じて、投資家を保護する。それが規制当局の主要な役割だ。

 

ここで重要なのは、「市場に関する情報」の「適切な開示」だ。ニューヨーク州司法省によると、ビットフィネックスとテザーは、投資家に十分な情報を開示せずに裏取引を行った。テザーは正式な通知をせずに利用規約を変更し、ビットフィネックスは沈黙を続けている。その結果、顧客の資金引き出しへの対応が大幅に遅れ、銀行との関係が悪化している。

 

事態を深刻にしている要因は、ビットフィネックスがビットコインの取引所として2番目に大きいことだ(執筆時点のデータによる:グラフ参照)。ちなみに、仮想通貨のインデックスファンドを運営するビットワイズはSECとの非公式のシンポジウムで、仮想通貨取引所が公表しているデータの大部分は虚偽だが、信頼できる取引所も少ないながらあると説明した。その信頼できる取引所の1つとされたビットフィネックスが、自分たちの資産について顧客に最新情報を適切に伝えていないのだ。SECがいらだつのも無理はなく、ビットコイン市場を疑う理由を自ら与えている。

 

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さらに今回の問題を考えれば、生まれて間もない仮想通貨市場がアメリカの投資家の安全に配慮していないと判断されることも、十分に考えられる。SECは5月、市場操縦の恐れと低い流動性を理由に、VanEck版とBitwise版のビットコインETFの申請に対して、審査における延期の決定を下した。

 

ビットコインETFの承認はさらに遅れることになるが、長期的にはまだ希望がある。現在、2つのビットコインETFがSECの承認を待っている。その1つを申請しているビットワイズのハンター·ホースリーCEOはCNBCのインタビューで、ビットコインは現在、かつてないほど資産として「存続可能な」状態になっていると語った。したがって、仮想通貨の金融化に向けた次のステップは、当然ながら仮想通貨ファンドだと、彼は続けた。

 

仮想通貨を取り巻く問題をSECが懸念していることについて質問されると、ホースリーは自信たっぷりに答えた──ビットコインの微妙な部分をSECも「以前よりはるかに適切に理解」していて、特に「仮想通貨関連のさまざまなサイトに出ている数字は正確ではない」という状況を認めつつある。

 

本当に重要なのは、仮想通貨のエコシステムやその裏表を総合的に理解することで、取引所や投資家など仮想通貨のすべてのプレーヤーが完全無欠だと立証することではないと、ホースリーは強調した。

 

ただし、このインタビューが行われた後、アイフィネックスの疑惑が明らかになった。仮想通貨のエコシステムの中でも特に大規模な取引所が、資金の取り扱いに関して、利用者と投資家の安全を侵害し、世界中の仮想通貨保有者を脅かした可能性が高い。この事実をSECは決して見逃さないだろう。





(英語版:https://www.longhash.com/news/331

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