By Kyle Torpey
Updated on October 09, 2019, 10:30 AM

イーサリアム、「デジタルオイル」からデジタル通貨への転換 ~ 試みは功を奏すか?


イーサリアム(ETH)がアルトコインの王者であることには議論の余地がない。ETHブロックチェーンはビットコイン(BTC)を除けばどの暗号資産よりも普及していると言え、ETHの目指す応用力に富んだスマートコントラクトは多くのプロジェクトにとって優れた手本となっている。

 

BTCがしばしば「デジタルゴールド」と呼ばれる一方で、ETHに投資する人々はETHを「デジタルオイル」と呼んできた。しかしこのところ、「ETHはオイルではなく通貨とみなすべきなのではないか」という考えが台頭してきている。

 

ここ一年でETHをベースとした分散型金融(DeFi)アプリがローンチされてきたことにより、ETHへのこうした見方はますます支持されるようになっているが、実際ETHは通貨として幅広く利用されているのだろうか。データを詳しく見てみよう。

 

イーサリアム以外のトークンによる取引が増加

 

ETHの通貨利用を追跡する有用なデータとしては、ETHネットワークのネイティブトークンであるETHによる取引が全体の取引に占める構成比が挙げられる。

 

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上記のチャートが示すとおり、ベースとなっているETHブロックチェーン上で発行されている種々のERC-20トークンの送金件数の構成比はETHの構成比よりも多くなっている。少なくともERC-20トークンの送金は2018年の夏時点で、ETH同等に行われるようになっており、以降はETHを上回る日も多い。

 

言うまでもなく、ERC-20規格が開発される以前は取引のほぼすべてがETHによって行われていた。ETHプラットフォーム上で新たなトークンを発行すること自体がそう簡単ではなかったからだ。これが2017年になると、ERC-20トークンの爆発的な利用が始まった。また、ERC-20トークンの初期の急進が見られたのは2016年5月28日で、これはDAOトークンが初めて取引所で交換できるようになった日のことだった。

 

Ethplorerによれば、過去数ヶ月ではテザーUSD(USDT )がETHブロックチェーンの非ネイティブトークンとしては一番人気となっている。以前はUSDTによる取引はBTCの一日あたり取引量の約5%相当だったが、徐々にその件数は増加し、現在はBTCブロックチェーン上に構築されたOmniプロトコルよりもETHネットワーク上で取引されることが増えている。

 

さらにここ数年で主要なステーブルコインのローンチも続いている。CircleとCoinbaseによる独自のUSDCステーブルコインの発行、GeminiによるGUSD、TrustTokenのTUSD、そしてPaxosによるPAXの発行などがいい例だ。

 

その上、分散性をより高めた安全な暗号資産としてつくられたDAIステーブルコインもある。とは言っても、DAIが銀行口座の法定通貨に支えられた従来のステーブルコインにまつわる諸問題をクリアできるほど分散性を高められているかについては疑問が残る。

 

ETHネットワーク上の一日あたり取引量でネイティブトークンであるETHをその他のステーブルコインが凌ぐようになる日はそう遠くないかもしれない。Coin Metricsによれば、9月9日単日でETHネットワークはそれぞれ271,805 ETHと178,046 USDTの取引を処理した。オンチェーン取引に限ってみれば、USDTの取引量はすでにETHの倍ほどになっている。

 

本記事の執筆時点では、ETHネットワークのもうひとつのキープレイヤーとしてDCSトークンを挙げることができるが、EthplorerによればDCSは過去24時間のブロックチェーン処理のうちおよそ20,000件を占めるまでになっている。

 

取引量、売買行動、ボラティリティ

 

もちろん、ETHネットワークでERC-20トークンが活躍しているからといって、必ずしもETHが取引されていない、あるいは通貨として使われていないというわけではない。とはいえ、現在、ETHの一日あたり取引量は2017年8月の取引量と同程度に留まっている

 

通貨としての利用を見るにあたっては、単純に取引件数を見るよりも米ドル換算の取引量を見てみると面白いことが見えてくるのだが、実は取引量においてもETHの実績は芳しくない。ETH取引量は2017年5月時点の取引量とおよそ同程度となっているのだ。

 

忘れてはならないのが、上記のような初期においてはいずれの暗号資産においてもオンチェーン取引のほとんどが取引所を介したものであったことだ。Chainalysisによれば、BTCネットワークにおいてすら、その取引の90%は取引所での入出金を伴う取引だったそうだ。

(取引量が急進傾向にある時の)ETH価格の変動とオンチェーン取引量の相関関係はCoin Metrics上ではっきりと確認することができる。

 

過去の記事でも指摘したように、特定の暗号資産がどのくらい通貨として利用されているかを測る指標として最適なのは価格変動かもしれない。Coin Metricsのデータからは、ETHネットワークのリリースから現在までの期間を通じ、ETHのボラティリティが徐々に10%超から5%未満へと下がってきていることがわかる。

 

BTCが基準

 

BTCを代替する選択肢として見れば、ETHはその他のアルトコインと比べ間違いなく最も成功していると言える。しかし、通貨としての役割を担うのであれば、やはりBTCとも競い合えるようにならなくてはいけない。

 

ERC-20トークンの台頭により、一日あたりオンチェーン取引件数ではETHはBTCを追い抜いたものの、通貨としての暗号資産の能力を比較するにあたっては、この指標はほとんど意味を持たない。(指標としての一日あたり取引量についてはこちらの過去記事を参照されたい)

 

ここ最近、BTCを凌ぐ一日あたり取引手数料(米ドル換算)を稼いでいることでもETHは注目されるようになっている。しかし、このデータは通貨としてのETHのポテンシャルというよりは、一般的なETHネットワークへのアクセスの需要が増していることを示すものだ。USDTやチェーンリンク(LINK)といったトークンを送金するためにユーザーが支払う手数料は、ETHのストアオブバリューや交換媒体としての有用性とは何ら関係がない。

 

暗号資産の通貨としての能力を比較する指標としては、オンチェーンのみの取引量、売買高、そして価格のボラティリティがある。2019年夏のほとんどの期間を通してETHのボラティリティがBTCと比較して低かったのは特筆に値するが、それでもこれらすべての面でBTCに対抗するにはETHにはまだ多くの課題がある。

 

短期では価格が安定している方が好ましいとはいえ、通貨は長期での価値貯蔵や成長の能力においても競うことになる。ETHの通貨としての有用性についておそらく最も不利となる証拠が、ETHネットワークの最初のローンチから一年も経たない2016年3月時点よりも現在のETHのBTC換算価格が低いという事実だ。アルトコインがBTCに対してかなりの優勢となった9月は、ETHにとってもまだ風向きが良かったのだが。

 

Castle Island Ventures のパートナー、ニック・カーター氏によれば、通貨としての役割に固執してこなかったETHのようなアルトコインは、「そもそもBTCが何のために作られたのか」という点を見落としているという。

 

通貨としての有用性という点でBTCと比較すると、BTCの先行者利益やネットワーク効果、ストアオブバリューとしての相対的な安定性にETHが打ち勝つことができるかは未だ不透明と言わざるを得ないだろう。

 

( 英語版:https://www.longhash.com/news/eth-is-pivoting-from-digital-oil-to-digital-money-but-is-it-working )


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