By Kyle Torpey
Updated on August 06, 2019, 14:30 PM

ただのデジタルゴールドじゃない — ビットコイン・スタートアップ勢、「決済」に回帰


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ビットコイン(BTC)にまつわる「デジタルゴールド」のミームが知れ渡るようになって久しいが、BTC関連の初期のスタートアップらは、以前は今より遥かに決済機能の開発に取り組んでいた。BTC提唱者らはピア・ツー・ピアのデジタルキャッシュシステムに賭けた種々の事業者に、瞬時に行える無料のトランザクションの実現を約束したのだ。しかし、BTCが全世界を対象としたデジタル決済のインフラとして機能するには未だ時期尚早—­­少なくともBTCが十分に分散化されるまでは—ということがわかると、その大部分は徐々にたち消えていったのだった。

 

過去数年間、BTCはストアオブバリューや投機のユースケースにおいて主に利用されてきた(それはBTC手数料のマーケットを見れば明白だ)。しかし最近、BTCをオンライン決済のシステムへ採用しようという当初の狙いに帰る企業の数が回復基調にある。

 

再燃するこうしたBTC決済への関心は、ほぼ例外なくライトニング・ネットワークの発展によるものだろう。ライトニング・ネットワークはビットコイン上で動作するセカンドレイヤー決済プロトコルだ。このライトニング・ネットワークを利用すれば、分散化と検閲耐性を大きく犠牲にすることなく、無料のインスタント決済が可能になる。

 

BTC決済のスタートアップとしては最も古参で著名なビットペイ(BitPay)のCEO、スティーブン・ペア(Stephen Pair)氏は2019年のビットコインカンファレンスで、同社がライトニング・ネットワークに関しては「様子見」の姿勢をとっていることを明らかにしたが、多くのスタートアップはこれに当てはまらない。

 

しかし、BTCは本当に取引媒体として広く利用される用意ができているのだろうか?LongHashはこの分野で活躍するBTCスタートアップ4社­—それぞれビットリフィル(Bitrefill)、フォルド(Fold)、ロリ(Lolli)、そしてオープンノード(OpenNode)—の幹部に対し、BTC決済のルネッサンスで実際何が起こっているのか、その真の姿を明らかにすべくインタビューを行った。

 

今がビットコイン決済導入のタイミング?

 

オンチェーンでのBTC取引がそもそも普通の日常的な決済に向かないのは周知の事実だ。これについては我々がインタビューを行ったBTCスタートアップの面々も同様の考えだった。

 

「実際の生活の場面で利用可能な決済手段にするにはトランザクションの速度を上げない限り、誰もBTCを使いたいとは思わないでしょう。なぜなら(販売拠点において)非効率だからです」とロリ社のCEO、アレックス・アデルマン(Alex Adelman)氏はコメントする。「たとえば、ラッシュアワー時にマンハッタンのスターバックスでラテを注文するとしましょう。販売側も顧客もこの構図の中では遅延は許されません。私たちは皆、BTCの処理速度がインスタントではないことを知っています。ですから、こういうシーンで私たちにはライトニング、あるいはライトニングのように手数料と処理時間を軽減してくれるセカンドレイヤーが必要なのです」

 

オープンノードのCEO、アフナン・ラーマン(Afnan Rahman)氏によれば、ライトニング・ネットワークは初期のBTCスタートアップが約束した「速くて安いオンライン決済」をうまく引き継いでいるという。

 

「ライトニング・ネットワークはこうした約束を果たすだけでなく、今日のマーケットに存在するアルトコインの90%のユースケースを代替可能だろうと考えています」とラーマン氏は述べた。

 

ビットリフィル社のCOO、ジョン・カーヴァロ(John Carvalho)氏にとっては、BTCのライトニング・ネットワーク特有の機能や決済エクスペリエンスの向上が、BTC決済システム導入を後押ししているという。

 

「例えば販売事業者はライトニングを利用すれば、請求書を発行して即座にBTCでの支払いを受けることができます」とカーヴァロ氏は説明する。「これは従来の買い物でのBTC利用やATM利用に比べて遥かに素晴らしいエクスペリエンスです」

 

今年の始めの時点で既に、ビットリフィルではライトニング・ネットワーク決済がその他のアルトコイン決済を凌ぐ人気を獲得しているとカーヴァロ氏は明かしていた。なお、ビットリフィルは様々な形態のギフトカード販売とBTCやアルトコインによる携帯電話のチャージといったサービスに特化した企業だ。

 

ビットリフィルは創業から何年も経つが、ライトニング・ネットワーク関連の商品・サービス開発を手がけたことで、最近さらにビットコインファンに認知された。

 

フォルド社もライトニング・ピザのウェブサイトにライトニング・ネットワークを導入し、一定の成功を収めている。同ホームページでは、ドミノ・ピザの商品をライトニング・ネットワーク経由で購入することで5%の割引を受けることができる。

 

「毎日のようにフォルドやライトニング・ピザが利用されているのを見れば、人々がライトニング決済を利用したがっているのは明らかです」とフォルドのCEO、ウィル・リーブス(Will Reeves)氏は語る。「ライトニングを使い慣れた人は、しばしばクレジットカードよりも遥かに頻繁に決済していることが分かります。プライバシーを護り、支出情報を消費者がコントロールできる負担のないワンタップ決済—その力を侮ってはいけないと思います」

 

BTC決済導入へのインセンティブ創出

 

リーブス氏が指摘したように、ライトニング・ネットワーク決済の使いやすさとBTCのもたらす自己主権性の組み合わせは、フォルドやその他の企業に一定の成功をもたらしているように見える。しかし、フォルドとロリの両社は報奨プログラムによってライトニング×BTCの組み合わせにさらなるインセンティブを創出しようとしている。

 

「我が社はクレジットカード利用と比べてライトニング利用では圧倒的なプライバシー保護を実現しつつ、そこにさらなる金銭的インセンティブを付加しようと取り組んでいます」とリーブス氏は述べている。「今後、引き渡した決済情報の漏洩や、取引履歴の転売といったことは一切なくなります」

 

ビットコインの古参のファンであればフォルドが新進の会社ではないことを知っているかもしれない。同社は2012年に設立され、当初、同社のフォルド・アプリを使用して決済すれば、スターバックスで20%の割引を受けることができた。

 

7月31日に、フォルドはユーザーに名だたる小売店でのBTC決済を促す、以前と同様のインセンティブを附加する報奨プログラムをリリースした。なお、同社がライトニング・ネットワークを本格導入してからわずか数週間しか経っていない。

 

その反面、ロリは長期戦で挑んでいる。販売事業者による決済サービス導入を目指す基本計画では(2019年のビットコインカンファレンスでの、同社CEOのアレックス・アデルマン氏の説明によれば)、まずクレジットカードなど従来の決済方法で様々な有名小売店で買い物をしてもらい、その見返りとしてBTCをキャッシュバックすることから着手予定とのこと。

 

「販売事業者にBTCとライトニングの導入を促すには、まず消費者にBTCをその他通貨に代わって使用するよう奨励する必要があります」とアデルマン氏はLongHashのインタビューにコメントした。「現時点では販売事業者が魅力を感じているのはクレジットカード手数料とチャージバックの軽減のようです。しかし、個人的には、メインストリームのBTC利用が増えるようにその分を消費者に還元しすべきだと思います」

 

ライトニングはもうゴールデンタイムに対応可能?

 

ライトニング・ネットワークがゴールデンタイムに既に対応できるようになったのかという点については無論、疑問が残る。オープンノード社はライトニング・ネットワークはようやく本格利用への準備が整ってきたところと見ているが、ライトニング・ネットワークが利用者にとって使いやすくなる日が来るのかという点には、未だ多くの疑念が寄せられている。

 

技術的な視点では、ライトニング・ネットワークの功績は極めて素晴らしいものだ。しかし、同時にそれは非常に複雑なものでもある。現時点では、この新たな決済技術を搭載する様々なアプリが、そうしたより複雑な部分をユーザーの目から遠ざけることができるのかが基本的な問題だと言えるだろう。

 

「ライトニングの複雑性への懸念は過大だと感じます。BTCが必要な人、そしてBTCのクオリティを求める人は新しいソフトウェアを学習できる人が殆どです。ライトニングのプロトコルと支援アプリは今後さらに使い道が広がると思いますし、実際のところはBTCを使うのと複雑さという面ではそう変わらないでしょう」(カーヴァロ氏)

 

リーブス氏によれば、ユーザビリティに関する最も難しい問題の多くは、必ずしもライトニング・プロトコル自体に由来するものではなく、それらをどう解消するかは搭載する側の責任だという。

「(ライトニング・ネットワークを)使い慣れてもらうのは簡単なことではありません。オンボーディング・ファネル(ユーザーがアプリ等を導入し、使い慣れるまでに徐々に離脱者が出て絞り込まれていく現象)には改善すべきことが山ほどあるのです。しかしユーザビリティに関わる最も重要な問題点はプロトコル自体に内在するものではなく、アプリに搭載する側が解決すべきこと—そしてそこに果敢に挑戦しようという私の気持ちに一切、迷いはありません」

 

とは言え、これらのアプリ上でライトニング・ネットワークのユーザーエクスペリエンスをよりシンプルにするためのツールは毎月—あるいは毎週かもしれないが—のようにリリースされている。ユーザーにとっては、ウォッチタワーやオートパイロット、サブマリンスワップ、そしてアトミック・マルチパス・ペイメントといった機能は今後知る必要などないものかもしれない。しかし、BTC決済分野でユーザビリティ問題の解決を目指すアプリ開発者にとっては、これらは非常に重要な構成要素なのだ。

 

また、ライトニング・ネットワークが決済における唯一のセカンド・レイヤーソリューションではないということにも留意すべきだ。ステートチェーン(statechain)や決済に特化したドライブチェーン(drivechain)等の他の手段も行く行くはライトニング・ネットワークを補完していくことになるだろう。

 

「BTCブロックチェーンの不必要な集中を分散させることができるので、サイドチェーンやマルチレイヤーのソリューションには大きな利点があると思われます」

ライトニング・ネットワーク、その他のセカンドレイヤー・ソリューション、あるいは異なる決済イノベーションの組み合わせなど、そのうちのどれを利用するかは別として、販売事業者による導入は自然と始まっていくだろうとカーヴァロ氏は考える。

 

「事業者による直接導入は強要されるべきものではありません。また強制的にホドラー(所有者を意味するスラング)を「つくる」ようなことも健全とは思えません」とカーヴァロ氏は言う。「ビットリフィルでは事業者による導入に真っ向から行くのではなく、カタログにギフトカード商品を拡充することで、事業者がBTCの直接導入を急がなくても良いようにしています。重要なのは、BTCのエコシステムが現在の市場が求める有用性に応えられるようにすることです。暗号資産の経済規模は成長していますが、市場のサイズに比べてテクノロジーはさらに速い速度で進化しています。ですから、今の導入ペースは理にかなっているのではないかと思います」

 

今日の日常的な決済にBTCを導入するのは大多数にとっては時期尚早かもしれないが、すぐにでもBTCを取引媒体として使用したい人たちのユーザーエクスペリエンス向上を目指し、開発者らはライトニング・ネットワークなどのソリューション開発に尽力している。そして、BTCネットワークが徐々に増加するユーザーへ対応する際、これらのプロトコルはその力を発揮することになるだろう。



(英語版:https://www.longhash.com/news/not-just-digital-gold-bitcoin-startups-are-working-on-payments-again


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