By Jack Filiba
Updated on June 14, 2019, 12:54 PM

「仮装売買」のナゾ:暗号資産取引所トップ10の取引高は、一日のビットコイン取引量のわずか7%?


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2019年6月4日、コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)などの暗号資産データサイトによれば、全世界における一日のビットコイン(BTC)取引高が約230億ドルを記録した。しかし、多くの取引所でその取引高が水増しされていることが判明。この数字も大幅に過大評価されたものである疑いは否めない。

 

すべての取引所を精査する手立ては未だ確立されていないものの、投資家向け情報サイトのMessariによると、ビットコイン取引を扱う上位10か所の取引所に限定したビットコインの一日あたり取引高は15億ドル程度になるのこと。その差は実に93%にも上り、ビットコイン以外の暗号資産上位100種をとっても、やはり同様にその取引高が操作されている可能性が考えられる。

 

「取引高が水増しされると、その資産は実際よりも健全に見えてしまう。そのため、人々に誤ったイメージを与えかねない」

 

暗号資産界では、実際の一日あたり取引高を測定するための方法として「リアル10(Real 10)」と呼ばれる新たな指標が広まっている。この指標は信用度が高く取引量も多いと見なされている上位10カ所の取引所の取引高データをのみを採用し、当該通貨の一日あたり取引高のおよその数字を割り出したものだ。

 

多くの暗号資産取引所では仮装売買(第三者を欺罔する目的で売買を行うこと)などを通じた取引量の水増しが疑われており、こうした行為は暗号資産産業そのものの印象操作に繋がりかねない。暗号資産の現状を正しく理解してもらうための新たな手立てが切実に求められているということだ。ビットコインなどの暗号資産は元来、透明性を持つオープンなものであり、誤った情報の発信はその対極にある。誤解を招く情報は取引高のような重要な指数においては特に問題だ。

 

「取引高は流動性の重要な指標であり、ビットコインのような金融資産においては流動性が特に重要な意味を持つ。一般的に、金融資産は流動性が高いほど健全な資産であるといえるからです」と、Messariの商品担当責任者であるチャオ・ワン氏はロングハッシュのインタビューで語っている。

 

「取引高の水増しは、こうした金融資産が実際よりも健全であるかのような印象を人々に与える可能性がある。もっと言えば、取引所は投資家を惹き付けるために、こうした取引高の水増しに手を染めてしまっているのだ。」(ワン氏)

 

しかし、当然「リアル10」にも弱点がないわけではない。ビットコインの一日あたり取引高と、10か所の認可取引所における取引高との間に93%もの落差があるとはいえ、これら10か所の取引所が業界の全体像を写し出せるわけではない。「リアル10」が対象とするのはバイナンス(Binance)、クラーケン(Kraken)、ビットフィネックス(Bitfinex)、コインベース(Coinbase)、ビットスタンプ(Bitstamp)、ビットフライヤー(Bitflyer)、ジェミニ(Gemini)、イットビット(itBit)、ビットトレックス(Bittrex)、ポロニエックス(Poloniex)の10社のみだ。

(米資産運用会社ビットワイズ(Bitwise)のリサーチより。なお本記事は上記の取引所を推奨するものではない。)

 

「これらの取引所は仮装売買等には一切関わっていないはずだ。また、その他の取引所が発表している取引量が100%仮装売買によるものだと言えるわけでもない。こう考えると、リアル10の取引量は全世界の実取引量の2分の1程度、と言うのが妥当かもしれない。」(ワン氏)

その他有力暗号資産による水増しはさらに深刻か

人気の高いビットコインは必然的に取引高の水増し量も最大となりますが、リアル10が示す一日あたり取引量との差異は、その他の暗号資産についてはさらに大きくなるケースが散見されている。

 

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上記のチャートが示すように、下記の有力暗号資産においても6/4報告の一日あたり取引量とリアル10による一日あたり取引量の差異パーセンテージには大きな開きがある。ダッシュ(DASH)98%、イーサリアム(ETH)96%、ステラー(Stellar/XLM)95%、ライトコイン(LTC)95%、イオス(EOS)94%といった具合だ。 

 

ビットコインキャッシュ(BCH)、トロン(TRX)、モネロ(XMR)、リップル(XRP)などの暗号資産については、差異のパーセンテージはビットコインよりは低かったものの、85%超の水準となっている。

 

これほどまでに幅広い暗号資産してリアル10のような指標を採用すると、即座に問題も浮かび上がってくる。たとえば、通貨の中にはリアル10以外の取引所で主に取引されているものもあるかもしれない。大幅な水増しが行われていない取引所もたくさんあると考えられるため、これらの通貨は実際よりも水増しされているように見えてしまっている可能性がある。

 

さらに、Messariのリアル10取引量は現物取引所のみを対象としているため、ビットメックス(Bitmex)のような大手デリバティブ取引所はデータに反映されていない。

 

しかし、ワン氏によると「報告されている全世界(暗号資産取引)量は、少なくとも実際の取引量の10倍以上にはなっているだろう」とのこと。

 

結局のところ、ほぼ全ての取引所において採用されている取引方法自体が、本来透明性の高いものであるべき暗号資産の正確な姿を捉えることを極めて困難にしている。 

 

「オンチェーン取引は公的に監査することが可能ですが、暗号資産取引は通常オフチェーン、つまり取引所が所有するデータベース上で行われます。そのため、取引量を正直に報告するかどうかは取引所次第だ。」(ワン氏)

 

取引プラットフォームの多くが取引量の報告に際して透明性を重視するようになるまでは、暗号資産産業のリアルな姿を把握する唯一の方法は、残念ながら大半の取引所を除外することに尽きるのかもしれない。



(英語版:https://www.longhash.com/news/366


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